石器時代の家出少女を救え!

ちびまるフォイ

ウパウパパパウパ?ウパウポー

『石器時代の家出少女を救いませんか?』



ふと見つけたサイトは家出少女を募るサイトだった。

でも、デザインはなぜか旧石器時代。


「エイプリルフールの消し忘れか?」


サイトを見ているとそうでもないらしく、

石器時代にもいる家出少女に部屋を貸すという俗にいう"神待ち掲示板"だった


ふざけて登録すると、さっそく希望者が出てきた。


「やっぱり石器時代ともなると娯楽はないだろうし、

 部屋のひとつでも貸したらムフフな展開になったりして……!」


童貞特有の下心で鼻の下を伸ばしていると、

俺の住んでいる部屋ごと石器時代にタイムスリップした。


窓の風景は都会のビル街から、だだっ広い草原になった。


「ウパウポウパ」


窓の外にはぼさぼさの髪と、石槍を持った女が立っていた。


「あんたは、サイトで見た家出少女!」


「ウッポポウパパ。パウパウピ?」


「部屋に……入りたいって言ってるのか?

 えっと、ウパー。ペヤピパピッテいいペプヨ」


「日本語でおk」


「しゃべれるのかよ!!」


石器時代の家出少女を部屋にあげると、見た目の女子力の低さに

さきほどまでたぎっていた性欲もしゅんとしぼんだ。


「どの時代でも女の子は大変なんだなぁ」


「石器時代をなめないでほしいウパ。

 毎日、石を集めて農業して大変ウパ」


「なんで家出なんかしたんだ?」


「……おしえないウパ」


家出少女はふくざつだ。


少女とのワンルーム生活なんて字面だけだと天国だが、

実際にはオナラもできなくなるほど窮屈な環境で俺の限界が近づいた。


「どういう理由で家を出たのかしらないけどさ、家に一度帰りなよ」


「いやウパ。ここにいるウパ」


「俺もしばらく現代に戻ってないし、

 家出終了したら現代のなつかしいカップラーメン食べれるんだよ」


「カップ……?」


「あ、そうだ!! 現代のものあげるから家に帰りなよ! な?

 きっと家族に見せれば家出どころじゃなくなるぞ!」


俺は部屋をあさってゲーム機やライターなどを渡した。

使い方を説明すると、はじめて見る現代の代物に家出少女は驚いた。


「すごいウパ! きっと親も喜ぶウパ!」


「な? 両親に見せてきなよ。家出なんかやめてさ」


「ウパ!」


少女はやっと家出を終了して部屋を出た。

これで現代に戻れるが……。


「そういえば、あの子の両親ってどんなだろう」


かたくなに家出の理由を話さなかったので気になってしまった。

石器時代にも家庭内暴力あるのだろうか。それとも思春期の反抗期か。


部屋を出てこっそり家出少女のうしろを尾行した。

現代だと完全に事案になることうけあいだ。



家出少女はやや膨らんだ土がならぶ土塚の前に機械を置いた。


「お父さん、お母さん。おもしろいもの見つけたウパ。

 これで私もぜんぜん寂しくないウパ。心配ないウパ。

 私のことは気にせず天国で楽しく過ごしてね。あ、ウパ」


「い……家出じゃなかったのか……!」


隠れているはずだったが思ってもみなかったシリアス展開に、

つい家出少女に声をかけてしまった。


「この近辺にはとても危険なマンモスがいるの。

 村の人々もたくさん襲われて、みんな家や家族を失ってる。

 でもあまりに強くて倒すことなんてできないの」


「語尾忘れてるぞ」

「……ウパ」


どうすればいいのだろう。

いくら現代の知識があるといっても相手はマンモスで勝てっこない。


「そうだ! 今度は君が現代にくればいい!」


「どうするウパ?」


「神待ち掲示板に、今度は俺が募集をかけるから君が受け取ればいい。

 そうすれば、今度は逆に石器時代から現代へタイムスリップする!」


「ウパ! それを使えばみんな救えるウパ!」


石器時代といっても同じ人間。

現代でやっていくのに不自由なんてないだろう。


これで1人の家なき子を救えるならやる価値はある。


「それじゃ、俺はいったん現代に帰って、神待ち掲示板に連絡するよ」


「ウパ!」


現代に戻ると掲示板に書き込みを行った。

すぐに返信がきたことで現代と石器時代とがリンクした。



「ようこそ、現代へ!!」






部屋にはバカでかいマンモスがタイムスリップしてきた。


「やったウパ―。これでマンモスがいなくなったウパ―」


凶暴なマンモスは石器時代から姿を消したことで、

家出少女や村のひとびとはいつまでも幸せに暮らしました。



めでたしめでたし(強要)。

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