弱小魔族でも、魔王様に選ばれる!?

はごろも狐

プロローグ 魔王選抜儀式

——集中権力こそ、革命的思考の宿敵である——


初代魔王は意味の分からぬ名言を残し、この世を去った。

魔族を集結させ、大連合を引率してきた初代魔王は、百万年の時を超えその生涯を閉じる。


ただ、魔王が死んだからと言って、悲しむ魔族達は一人としていない。


「俺が次の魔王だ」

「いや、俺だろう」

「何を馬鹿なことを言っている。この偉大な名家である私ぞ」


魔王城に響き渡るのは、二代目魔王は我だと叫ぶ声ばかり。

その理由は、初代魔王が出したとある号令にある。


『魔王の資格者は、魔族全員が対象であり、すべては運で決まる』


初代魔王は死ぬ直前にこう言った。


《これから数百年の時と共に、時代は確実に変わる。そして未知なる時代を生き抜くためには、革新的思考が必要なのだ。だから私は問うた。魔王とは力ある者でなくても良い。いくら弱かろうと関係ない。何かを変えたいという野心的な気持ちを持った心。それが大切なのだ。だから私は皆にチャンスを与える。魔王になりたいと思う強い気持ちの持ち主に。・・・・・・最後に言い残す。百万年毎の魔王任命儀式は、野心ある魔族全員を対象とし、ランダムで決めよ》


魔王に仕える四天王は、その話を聞いて唖然とした。

ここまで強大な組織を作り上げるには、初代魔王のような強大な力が必要だと、彼ら四人は理解していたのだ。だから魔王を偉大だと彼らは思っていた。

しかし、魔王が考えていた内容と相違が見つかると、口を開き、けど逆らえず、それもランダムで決めると言うことに、驚きを隠せなかった。


そしてその儀式が今、魔王城・大広場で行われようとしている。


「我々は、魔王様がお決めになった儀式を正式に実行する。対象は魔王になりたいという野心的な心を持った魔族全員とし、任命には魔王様の魔力が詰まったこの水晶で決める。なお、異論は認めず、言い放ったクソ野郎には、魔王様に変わり処刑する」


魔王代行の闇の四天王が、魔王だけが腰掛けられる王者の椅子の横に立ち、号令を読み上げていた。


大広間には、その野心的な心を持った魔族達で溢れかえる。まさに魔族のオンパレード。勇者達が見たら、冷や汗を吹き出しては逃げだすだろう。


水晶は輝きだし、二代目魔王の名が刻まれる。

その名は——ミゼル=アスタリスク——。







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