第34話砂漠の水編⑧

次の日、僕は店長から事務所に呼ばれた。


「こら!お前!昨日、寮の近くで何してたんや!」

店長の激が飛ぶ。


寮の近く?

そういえば昨日、女の子が寂しいがっていたので、寮の近くまで送って行ったのだ。

寮の前のコンビニで買い物するからと、それに付き合ってから別れた。


「うちの女子社員と、寮の前のコンビニで買い物してたらしいやんけ!」

そうか、誰かに見られていたのか?

「いや、女の子を寮の前まで送ってコンビニで買い物してただけです。」

「その後、女子寮に行くつもりやったんやろ!」

「違います!」

すると、そこに班長がやってきた。


「あんな。お前な。あんなとこで二人で一緒に買い物してたら、そりゃ言い訳でけへんで。」

こいつか!この班長が見ていたのか!

そして、店長にチクリやがったのか!


「買い物してただけです!部屋には行ってません!」

班長は怒りを押さえながら言う。

「そんなもん誰が信じるねん。あんな状況。仲良く買い物しやがってよ!」


こいつ!俺に嫉妬しているのだ!

自分が唾を付けていた女の子と、僕が一緒だったのが気に入らないのだ!


「あの後、女の部屋に行ったんやろ?正直に言えや!」

「行ってません!」


すると店長が激高して叫ぶ。

「女の方も呼べ!」

そして事務所にその女の子も呼ばれる。


「昨日、原田はお前の部屋に行ったんか?」

「・・・・行ってません。」

すると班長が口を挟む。

「まあ、そう言うやろな。誰だって。」

こいつ!何なのだ!

自分のした事を棚にあげて、俺と女の子が寮の前のコンビニで買い物してた事が、そんなに気に入らないのか!

嫉妬の塊か!

そして、お前のした事の方がよっぽど罪じゃないのか?


店長が女の子に聞く。

「・・・お前、原田の事どう思ってるねん?」

「どうって・・・」

「正直に答えてみい。原田の事どう思ってる。」


「私は・・・・好きです。」


バカだ!この子はバカか?

こんなタイミングで、何を正直に言うのだ?

そんなの、この状況で言うなんて、本当にバカすぎる!


「お前らの言う事なんか、信用できるか!どこの誰が信用するねん!」

店長が発狂したように叫ぶ!


「この女子社員が少ない状況で、唯一の女性社員にちょっかい出しやがって!」

「僕は・・出してません!」

「こいつは、お前の事好きや!って言うてんねんぞ!その状況で、部屋には言ってない?そんなの誰が信用するねん!」

店長の怒りは収まらない。


「お前ら!二人揃ってペナルティーや!寮に男を入れた罪!寮に入った罪!二人ともペナルティーを課す!」


なぜだ?

ちょっかいを出したのは班長じゃないか!

女の子が入社した、その初日に!


でも、それを言ってしまえば、傷つけてしまう。その女の子を。そんな恥をここで晒すのは僕はできなかった。

店長のペナルティーを受け入れる事にした。


僕は一週間の残業。

そして女の子は、一週間のトイレ掃除。


そんな僕ら二人を、班長は憎悪の目でみていた。

自分が狙っていた女の子に手を出した僕。

そして、自分が狙っているにも関わらず、下っ端の一般社員の僕が好きだ!と言った女の子。


僕らは愚かなアダムとイブ。

そんな二人を、班長が睨む。

この恨み、このままですむと思うなよ!お前ら!


班長の目は、そんな目をしていた・・・・

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