ニートな俺が異世界を救うことになった件
佐久間株貴
第1話ニートな俺が異世界に行く事になった件
「さてと、コンビニでも行くか」
今期のアニメを一通り見終わって、午前1時を過ぎた頃ジャージ姿のまま家を出た。
俺は高校を卒業して実家を離れ、今年から大学に通っていた。だが、元々コミュ症である俺は学校で友人関係をうまく築けずにだんだん家に引きこもるようになっていった。
今していることと言えば、ゲームとお気に入りのアニメを見るくらいだ。
当然親には大学を辞めて帰ってくるようにとしつこく言われているが、俺はこっちで仕事を見つけて働くと言って何とか仕送りをしてもらい生活をしている。
コンビニに着くと、適当に飲み物とインスタントラーメンをかごに入れ、さっさとレジで会計を済ませた。
鈴虫が鳴き声が風の音と共に聞こえる落ち着いた夜の道を歩いていると田舎の実家が懐かしく思えてくる。
静かだな
そう思いながら袋からペットボトルのお茶を取り出し蓋を開け一口飲んだ。ペットボトルを袋にしまおうと思ったとき、気がつくと目の前に女が立っていた。
その女は風変わりな格好をしていた。鎧を身につけて腰には剣が二本ぶら下がっている。
日本人とは思えないような透き通るような銀髪で青い瞳。そしてじっと俺を手を見つめている。
「あの、何かご用ですか?」
少し怯えながら俺は答えた。
「鳴神勇様ですね。私はアリシア・フェネットと申します。驚かせてしまい申し訳ございません。私も急ぎの命で、伺いましたので」
その女は俺の名前を知っていた。
「なぜ俺の名前を、どこかでお会い・・・」
俺の質問を遮るようにアリシアは再び話を続けた。
「私たちの国は、今大変なことになっています。停戦中であったのですが相手国が協定を破り攻めてきたのです。無論我が軍も反撃にでて何とか押さえ込みましたが、いつまた仕掛けてくるかわからない状況です」
アリシアが言うにはどこかの国で戦争が起きているてアリシア陣営はかなり押されているということらしい。
俺はニュースはほとんど見ないが流石にそんな大きな戦争が起こっているとネットでも騒がれているはずだ。しかし最近そんな記事は見たこともない。
これが俗に言う厨二病というやつか。実際見てみると相当痛いな。
「芝居ならよそでやってくれませんか?」
一言そう言ってその場を立ち去ろうとした俺をアリシアは引き留め、さらにこう続けた。
「このままでは我が国は滅びてしまいます。しかし、先日我が国の予言の石柱に新たな予言が出現したのです」
・・・大地の外よりやってくる竜の紋を刻みし者がこの国を安寧へと導くであろう・・・
石柱にはこう書かれていたという。
「竜の紋を刻みし者って訳がわからないし、妄想も大概にしておいた方がいいですよ」
ここまでくると厨二病の域を越えてもはや病気だ。変なことには巻き込まれたくない。
「鳴神勇、あなたには心当たりがあるはずだ。私たちも何の宛もなくあなたをあたった訳ではない」
そこまで言われてしまうと俺も少し考えてしまう。
俺に心当たりがあると言っているが、正直思い浮かばなかった。恐らくその石柱に書かれた予言がヒントのはずだ。もう一度思い出してみた。
大地の外よりやってくる竜の紋を刻みし者がこの国を安寧へと導くであろう。
考えていると、静かな通りに腕時計のアラームが鳴り響いた。
「アニメの一挙放送が始まる時間か」
そう言いながらアラームを切ろうとした俺に衝撃が走った。
あるじゃないか、竜の紋。
俺は生まれた時から手の甲にアザがある。そんなに大きくもなく特に気にしなかったので完全に忘れていた。
俺が手の甲を見ていると、アリシアが口を開いた。
「あなたの手の模様は、まさに予言通り。これからあなたを我が主人の元へ連れていきます」
そういってアリシアは俺の手を掴み走った。
そして少し走った所でアリシアは急に止まった。
ニート生活の俺は数分走るだけで体が悲鳴を上げていた。
「ちょっと待ってくれ。君の主人はどこに居るんだ!こんなとこに来ても何もないぞ」
そう言った俺を無視してアリシアは独り言のように言った。
「ここなら大丈夫そうだ」
アリシアはその場で何かを唱えている。
「どこの国なんだ」
再度問いかけた瞬間、辺りがまばゆい光に包まれ目の前には何と形容すれば良いか分からないが穴のようなものがあった。
そして、俺の手を掴み穴に入ろうとするアリシアはこう言った。
「さあ参りましょう!我が王国アストレアへ!」
その穴に吸い込まれ意識が遠退きながら俺は叫んだ。
「聞いてねえよ!」
ニートな俺が異世界を救うことになった件 佐久間株貴 @sakumakabuki
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。ニートな俺が異世界を救うことになった件の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます