これは純粋なボーミーツガールであるが、けして単純なボーイミーツガールではない。温かくも切ない、胸が締め付けられるような恋愛譚だ。
華族の少女は山で青年と出会う。青年は山神の「手足」であり、成長を止めた姿でずっと人間とかかわらずに暮らしていた。少女は青年に外の世界のことや文字について彼に教え始める。人とかかわることで、徐々に「人間らしさ」を取り戻していく青年は、いつしか少女に想いを抱くようになる。そして少女も、青年に想いを寄せるようになる。
しかし、青年が人間的な感情を持つことは、ある者によって仕組まれたものだった。そして少女も、兄の命令で家のために許婚を決められてしまうのだった。それでも、二人はもう一度会うことを望んだ。
果たして、青年と少女の切ない恋の行方は――?
文章がとても読みやすく、あっという間に読み終わってしまいました。静かな語り口は、まるで作者様の文章自体が、山の中なの静謐で神聖な空間を表わしているかのように感じます。この作品に出会えて良かったと思います。
是非、ご一読ください。