第2話

「ちょっと、あんた何このイケメン見てんのよ?」


「へ?そんなことないよ」


「まぁ母さんは偏見ないつもりだけどね。孫は欲しいから」


「そういう事じゃなくて」


「じゃあどういうこと?まさか、見とれてた?」


なんだか何も言えなくなって僕はベーコンエッグを一気に食べてスープを飲み干した。


「ごちそうさま!」


バタバタと洗面所に行って顔を洗う。あのイケメンが気になる。僕は鏡を見た。ふっと黒い何かが重なって見えた。目をこすってもう一度鏡を見る。気のせいだったみたいだ。歯を磨いて僕はカバンを取りに二階に上がった。


「……っ……あれ?…」


頭痛がして僕はドアの前でしゃがみこむ。何かを打ち付けるような痛み。瞼が重くて目を開けられない。


「夏輝?どうしたの?……ちょっと夏輝!?大丈夫?」


慌てて上がったのか母さんが僕の額に手を当ててから背中を撫でる。僕は一つ息を大きく吐いた。大丈夫、大丈夫と言い聞かせ母さんを見る。母さんが不安そうに僕を見ていた。


「大丈夫、目眩がしただけだから」


「なら、いいけど。お願いだから具合が悪くなったらちゃんと言うのよ?輝明さんみたいになったら……」


「大丈夫だから。僕、行ってくるね」


ドアを開けてカバンを取ると母さんにもう一度大丈夫だと伝えた。そのまま玄関に行き靴を履く。


「行ってきます」


「気を付けてね!!」


父さんは僕が生まれる前、病気を隠して仕事をしたせいで悪化させてしまい僕の顔を見ることなくいなくなった。母さんはその事で親戚から責められ自分自身をも責めていたらしい。まだ赤ちゃんだった僕はお祖母ちゃんに育てられた。その後、母さんは持ち前の明るさで立ち直ると僕を育ててくれた。


「なんか変な頭痛だな……」


まだ頭を打ち付けるような痛みがじんわり響いてくる。僕は休みながら少しずつ歩いた。

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手を伸ばしたその先に 長島東子田川 @toukonagasima

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