無免許レビューだけは許さない
ちびまるフォイ
こいつ……無免許だぞ……ッ!?
「ここがカクヨムレビュー免許所得場か……!」
友達とやってきたレビュー所得場。
ここで俺はレビュー免許をとってやる。
「一緒に頑張ろうな!」
「イエス。ここでレビュー免許とって新人賞合格するネー」
教室に入ると、レビュー講師がやってきて教鞭をふるう。
「いいですか。レビューは誰もが好き勝手やってると思いがちですが
実際にはちゃんとした免許がいります! なぜかわかりますか!?」
「え……わ、わかりません」
「作者への感謝を最大限伝えるためだからです!!!」
免許候補生は必死にノートにペンを走らせる。
「最近では無免許レビューもよく見かけますがあんなのはゴミです。
レビューはあなたのツイッターでもなければ感想メモでもありません!
そんなものはチラシの裏にでも書いて、トイレでケツをふけばいい!」
候補生はメモを取る。これはメモしなくても……。
「レビュー免許を取るためには
"的確"で"作者への感謝"がなくてはなりません!
この教習所ではその2点をけして忘れないように!!」
「「「 はい!!! 」」」
「イエース」
帰国子女の友達だけが浮いた返事をした。
さっそく全員に小説が配られて自由レビューテストが行われた。
レビュー
全体的にどれもおもしろかったです。
でも今ひとつとびぬけたものがなかったです。
「このレビューを書いたのは誰だぁ!!!」
「お、俺です……。あの、なにかまずかったですか?
まずは褒めたあとに、あえて落とすことで作者の反骨心をあおって
より創作意欲をわかせてほしいように……」
「はぁぁぁぁぁぁぁぁ!? ぶっ殺すぞ!!! てめぇは神か!? あぁぁん!!?」
「先生、言葉づかいがすごいことになってます」
「レビューは低姿勢を常に意識しろ!
クソ偉そうな態度は自分への信頼や判断力すら疑われる!
そして、具体的に書け!!
"全体的に"とか書く奴はちゃんと読んでないにわかレビュアーだ!!」
「す、すみません……」
「先生こうデースか?」
レビュー
風景描写がとても丁寧で読んでいて映像が脳裏に浮かびます。
作者の表現力もさることながら、キャラが個性的で魅力的でした!
次の更新も楽しみです!
「パーフェクト&エクセレントだ!
具体的かつ自分の主観を織り交ぜながらの最後の応援……!
いっそもう抱いてくれ!!」
「センキューです」
「なん……だと……!?」
思えば、友達との差が開き始めたのはこのころからだった。
数日後、教習所で友達は首席卒業してレビュー免許を所得。
さまざまな作品にレビューをしては作者に気に入られ、
逆評価をされることでどんどん人気作家へと変わっていった。
俺はというと……。
「ダメだダメだ! 何度言ったらわかる! これじゃ合格できないぞ!!」
「えぇ……」
他の候補生すべてが合格したのに俺だけ免許取れずにいた。
この先控えている新人賞までには免許をとって、
レビューによる逆評価で作品の人気を高めておきたいのに……。
「ポイントゼロの小説なんて落選確実だよなぁ……」
いったいどうすればいいのか。
ふとサイトを開くと、俺の心に潜む悪魔が声をかけた。
―― レビューしちゃえよ。
「……無免許でレビューしたって、誰がわかるっていうんだ。
別に無免許でもいいじゃないか!」
やけ酒の勢いもあってレビューを行った。
最初の1回目はびくびくしながら投稿したがなんてことはなかった。
それどころか、レビューを感謝した作者からの逆評価も帰って来た。
「なんだ! 免許なんて関係ないじゃないか!
ようしどんどんレビューしていくぞ!
新人賞までに俺の作品をたくさん評価してもらおう!」
・
・
・
翌朝、目を覚ますとカクヨム警察に囲まれていた。
「え!? な、なんですか!?」
「カクヨム警察だ。あなた、昨日たくさんレビューしましたね?」
「あ、はい……」
「ちょっとここに息吐いてもらえますか?」
袋に息を吹き込むと、カクヨム警察はそれを薬で判定する。
「アルコール判定ありますね。酒気帯びレビュー、と。
あなた、レビュー免許は?」
「な、ないです……」
「無免許でしかも酒気帯びレビューね……やらかしましたね」
「や、やらかした!? 俺はレビューしただけですよ!?」
「サイトを見てなさい」
カクヨム警察は開きっぱなしだったパソコンの画面をこちらに向ける。
作者からの怒りのメッセージが近況ノートにあふれていた。
>ぜんぜん違う小説のレビューを私の作品に投稿しないでください!
>まるで読んでないくせに、テキトーなレビューは迷惑です!
>全体的にって……読んでないだろ?
「なんじゃこりゃぁぁぁ!?」
「レビューをするのは簡単です。やること自体は誰にでもできます。
だからこそ、作者に誠意と執筆への感謝を忘れてはいけません」
「す、すみません……。
俺は自分の評価が欲しいばかりに安いレビューをしてました……」
「今回は初犯ということで厳重注意で済ましましょう。今後ないように」
「はい!!」
すっかり心を入れ替えた俺はレビュー免許教習所で真面目に勉強した。
誰よりも時間はかかったが、なんとかレビュー免許を所得した。
「結局、新人賞までに免許取れなかったから、評価集められなかったネ」
「いいんだよ。そりゃ評価が高い作品は注目されるかもしれないけど、
審査員はちゃんと見てくれる。当然、免許だって持ってるんだから!」
そして、新人賞が発表された。
新人賞結果発表 -----------
大賞:該当なし
(審査員のコメント)
全体的にどれもおもしろかったです。
でも今ひとつとびぬけたものがなかったです。
---------------------
無免許レビューだけは許さない ちびまるフォイ @firestorage
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます