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こうして美紀コピーは〈眠り〉を深くした。

誰かが起こさない限り、ずっと眠ったまま。


剣人は美紀コピーが自分の要求に最大限こたえてくれたのだと知る。遺品、形見として残ること。

何故そこまで答えてくれたのか。母だからだ。それ以外にない。

その美紀コピーを再び生活の外に追いやることに、罪悪感がちくりと胸を刺した。

けれど自分が望んだこと。振り返らない。


剣人の日常は何も変わらない。里巳は美紀コピーがいなくなった心の穴を埋めなければならない。それぞれの思い、感情の整理を。


結局、剣人にとって美紀コピーは遺品、形見でしかなかった。

完全に消し去ることも躊躇われ、また頻繁に干渉することもない。

再び記憶の棚にしまいこんでしまった。その時がくれば、また引き出すだろう。

剣人が生きている限り、美紀コピーが存在する限り、二人の時間が交差するときはくる。


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私のつづき 二律背反 @omi-yagata

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