Live.63『彼は無慈悲な仮面の女皇 〜MASQUERADE PARTY〜』

 気が付いたときには、世界が一転していた。


 ──ここ、は……?


 そこには時間もなければ景色もない。

 まるで永遠に底の見えない奈落を堕ち続けているような、度し難い不快感が全身を満たしていく。

 鞠華の意識はいま、闇に飲み込まれつつあった。


 ──……っ!?


 赤黒い百足むかでのようなナニカが肌の上でうごめくのを感じ、驚愕と気持ち悪さで顔を歪ませる。

 一匹や二匹どころではない。鞠華の手や足の先へと執拗に絡みつくそれらは、暗闇から無数に伸びていた。

 その“むし”は葉を貪るように、柔肌を喰らいながらジワジワと上り詰める。

 やがて四肢を完全に覆い尽くすと、さらに手足の付け根、そして胴体や首のほうへと範囲を拡大させていった。


 ──やめて……そんなの、入らない……。


 血肉を内側から引き裂かれるような痛みに、鞠華は抵抗する術もなく悶絶した。


 ──いやだ……。


 肉体からだを内側から侵されていく。


 ──ゆるして……。


 精神こころが誰かに食い破られていく。


 ──死んじゃう……。


 ではなくなっていく。


 “逆佐鞠華”という名の仮面が、剥がれ落ちていく。


 ──ゆるし……て……許シテ、下サ……イ……おね、ガ……。


 救いをうように紡がれた声も、闇の中へと消えていく。

 そうして虚無の海に取り込まれてしまった彼の意識は、そのまま深淵へと沈んでいった。





 鞠華に突然降りかかった顛末てんまつは、その場にいた彼以外のアクターも目撃していた。


「おい、大丈夫なのか!? 鞠華ッ!」


 目の前でじっとしたまま動かないゼスマリカへ、嵐馬が必死に呼びかける。

 しかし、機体に乗っているはずであるアクターからの応答は一向にない。

 状況からみても、鞠華の身になにかが起こっていることは明らかだった。


(それに……いったい何なんだってんだよ、この黒いドレスは……?)


 ゼスマリカのフレームを覆っている漆黒の装甲に目をやる。

 否、という表現のほうが適切かもしれない。


 “ワンダー・プリンセス”の装甲を禍々しい形へと造り変えてしまった謎のアウタードレスは、まるで寄生虫のようにゼスマリカへと取り憑いていた。

 また侵食の影響かフレーム自体の形状にも変容が生じており、各所に引かれていたマゼンタのラインは直線ストレートから稲妻状ギザギザへ。五本指のマニピュレーターも先鋭化され、その長細い指は悪魔の手を彷彿とさせた。


(“マスカレイド・メイデン”──たしか支社長のヤツは、そう呼んでたよな……)


 それが黒いアウタードレスの識別登録ドレスコードなのかはわからない。

 ただ先ほどのウィルフリッドの口ぶりからしても、普通のドレスと何かが違うことはほぼ確定的と見ていいだろう。

 全身を震え上がらせるような戦慄に嵐馬が息を呑んだそのとき、長らく沈黙していた“マスカレイド・ゼスマリカ”がゆっくりと顔を上げた。

 怪しげな仮面で覆われた眼に紅い光がともり、静かな眼差しでじっとスケバン・ゼスランマを見据える。


「鞠華! 無事だったん──」


《破壊スル》


 嵐馬の口を突いて出た安堵の声を、おそろしく冷たい声音が遮った。

 変声期を迎えた少年のものとは思えない、少女のように愛らしい音色。


 もはや聞き間違えようがない。

 それは紛れもなく、逆佐鞠華から発せられた声だった。


《全テノドレスヲ……破壊スル……!》

「おま、なにを言って……ッ!?」


 思わず言い返す嵐馬だったが、途中でゼスマリカの姿が視界から消えていることに気付いた。

 次の瞬間、不意に背中から強い衝撃を受ける。いつの間にか背後に回り込んでいたマスカレイド・ゼスマリカの上段蹴りが、スケバン・ゼスランマを吹き飛ばしていた。


「ぐああああああああああああッ!!」

《嵐馬ッ! おいマリカ、まさか味方がわからないのか……!?》


 隔壁に叩きつけられたゼスランマと入れ替わるように、今度はウエスタン・ゼスモーネが鞠華を止めに入る。

 だが、マスカレイド・ゼスマリカは伸ばされた腕を乱暴に振り払うと、さらに肘打ちによる追撃を喰らわせる。

 怯みつつも何とか機体を制動させる百音だったが、そんな彼の頭上に赤色の光輝がきらめく。


 曇天に浮かぶそれは、ヴォイドで生成された細長い待針まちばりだった。


《“第三禁術ラウンドスリー嫉妬の針エンヴィースピア”》


 鞠華がそっとささやいた、その刹那。

 空中で静止していた数十本もの待針が、ゼスモーネをめがけて一斉に降り注ぐ。

 百音はもちろん棒立ちでそれを甘受するつもりなどなく、咄嗟に後ろへバク転してどうにか回避。

 先ほどまでゼスモーネの立っていた地面に、恐ろしい本数の針がまるで墓標のように突き刺さった。


「なあオイ、星奈林。鞠華のやつはどうしちまったんだ……?」

《さあな……ただ一つだけ言えるのは、今のアイツには敵味方の区別がつかなくなってるってことだろう。おそらくあの黒いドレスの影響でな》


 つまり、暴走。

 ゼスマリカは何らかの理由で搭乗者アクターの操縦を受け付けなくなり、制御不能に陥っている可能性が極めて高い。

 そして百音も指摘したように、原因は十中八九ドレスにあるだろう。嵐馬にも思い当たる節があった。


「ドレスギャップってやつか。俺の“ネコミミ・メイド”と同じ……」

《……いいや、はそんな生易しいものじゃない》


 嵐馬の推測を否定したのは、かつてヴォイド研究者でもあった紅匠だった。

 彼女もまたゼスマリカとの間合いを慎重に図りつつ、この場のアクター全員に対し有視界通信をオープンにして忠告する。


《かつて存在していたプロジェクトに、『アウタードレスを人為的に生み出す』という計画があった。不確定要素の多い媒介者ベクターに頼らずとも、アーマード・ドレスの性能を安定して引き出すためのな》

「人工のドレス、だと……?」

《だが実際に完成したのは、当初の意図とは全く異なる代物だった。破格の性能と引き換えに、そのドレスはあろうことか搭乗者アクターの精神へヴォイドを逆流させ、自我の崩壊を誘発させる性質を持っていた。事実、それによって計39人ものが、稼働実験時に精神を食い殺されている》

「……! まさか、そのドレスってのが……」


 眼前に佇む黒いゼスマリカに視線を向けながら、嵐馬がハッと目を見開いた。

 すると彼の予想を肯定するように、匠は心底忌々しげに名前を告げる。

 

識別登録ドレスコード“マスカレイド・メイデン”。災厄の犠牲者たちの怨念を封じ込めた、最低最悪の失敗作──そして私の、未練だ》


 衝撃のあまり開いた口が塞がらない嵐馬だったが、そのとき百音がどこか納得のいかない面持ちで訊ねた。


《ちょっと待て。じゃあなぜゼスマリカは止まらずに動くことができている? そのドレスが装着者の精神を壊してしまうなら、そもそも同期シンクロ自体が成り立たねぇ。そうなったら機体だって動かせないハズだ》

《それについては私も理解しかねている。何しろ前例がないケースだからな》


 匠が低い声音で答える。

 彼女の性格や口ぶりからして、嘘を吐いている可能性は低いように思えた。


《そもそも“マスカレイド・メイデン”がヴォイドの逆流を行うのは、そうやってアクターに精神負荷……つまりストレスを与え、ヴォイドゲートをこじ開けるためだ》

「アクター自身を、媒介者ベクターにしてしまうってコトか……?」

《ああ。それによってドレス側は理論上、アクターが倒れない限りは無尽蔵にヴォイドを引き出すことができる。もっとも並の人間なら、ドレスアップしただけで精神崩壊に陥るほどの負荷がかかるという前提条件付きだがな》


 匠がそう前置きした上で、レベッカが自らの考えを明かす。


《これはあくまで私の仮説に過ぎないけれど……鞠華くんのアクターとして異常ともいえるヴォイド耐性が、“マスカレイド・メイデン”の精神汚染に耐え切っているのかもしれないわ》

《耐え切ってるって……いやアレ、どう見ても暴走しちゃってるじゃない》


 もっともな指摘をする大河だったが、モニター越しのレベッカはすぐに首を左右に振る。


《暴走で済んでいることが異常だという意味よ。そしてアクターの精神が壊れない限り、“マスカレイド・メイデン”は文字通り……無限に動き続ける殺戮機械キリングマシーンと化す》


 今までも“チミドロ・ミイラ”の出力変異フェイズシフトやダブルドレスアップ形態といった、強力な性能をもつドレスはいくつか存在していた。

 ただしそれらはヴォイドの消耗が激しいというデメリットも同時に抱えていたため、継戦可能時間にも大きな制約があった。

 だが──あろうことか“マスカレイド・メイデン”はあれだけの性能を誇っていながら、相応しい乗り手さへそろえば無制限に戦闘を継続できるという。


 決して尽きることのない無限の動力エネルギー──。

 その理屈はあまりにもシンプルで、しかし他のアーマード・ドレスたちに対して唯一無二かつ絶対的なアドバンテージにほかならない。

 脅しでも何でもない有り体の事実を告げられ、嵐馬は大きく息を呑む。

 彼以外のアクターも概ね同じような気持ちだった。


「支社長は、なんでそんなドレスを鞠華に……」

《先ほども言っていたでしょう、『必要なデータは集まった』と。つまりはそういうことよ》

「くそッ、俺たちアクターは用済みってコトかよ……!?」


 当然ながら納得のいかない様子で嵐馬が吐き捨てる。

 考えたくもなかったが、どうやら自分たちはウィルフリッドの掌の上で転がされていたらしい。

 同じ“オズ・ワールド”に所属しているはずのアイドル・ゼスパーダが、いつの間にか戦場から姿を消していることも気がかりだった。


《……っ! まりかを、助けなくちゃ……》

《紫苑!? よせ、迂闊に近づくな!》


 匠の制止を振り切り、ミイラ・ゼスシオンが突撃した。

 アスファルトを踏み砕き、助走をつけて跳躍。低空で静止しているマスカレイド・ゼスマリカをめがけて、真正面から斬りかかる。


 ──が、クローの切っ先が逹するよりも前に、マスカレイド・ゼスマリカは咆哮をあげた。

 全身を覆う黒いドレスからあり得ない量のヴォイドが放出され、その余波でミイラ・ゼスシオンがなす術もなく吹き飛ばされてしまった。

 しかもそれを上回るスピードで、追ってきたゼスマリカが追撃を仕掛ける。


《“第五禁術ラウンドファイブ強欲の爪グリードネイル”》


 鮮血よりも赤いヴォイドをまとわせて、マスカレイド・ゼスマリカが鋭い手刀を繰り出す。

 とっさに紫苑は空中で体を捻らせてこれをかわそうとした。だが完全に回避することまではかなわず、ゼスマリカの爪はまるでスプーンのように“チミドロ・ミイラ”の装甲をすくい上げ、容赦なくえぐる。

 なんとか致命傷を避けることはできたものの、バランスを崩したゼスシオンはそのまま地面に体を強く打ち付けた。そんな彼女の惨状を見るなり、匠は弾かれたように申し出る。


《ボス、このまま奴を野放しにしておくわけにはいきません。ここは連携して取り押さえるべきかと》

《そうね……わかりました。ゼスタイガとゼスティニーは“オズ・ワールド”との戦闘を一時停止し、“マスカレイド・メイデン”の撃退に当たってください》


 レベッカが命令を下すと、二機のアーマード・ドレスはゼスシオンを庇うように一歩前へ出る。

 すると彼女らの隣にスケバン・ゼスランマとウエスタン・ゼスモーネまでもが合流し、総勢4機のアーマード・ドレスが並び立った。


《言っておくが、アンタが裏切ったことを許したわけじゃあない……。市民を守るアクターとして、役目を全うするだけのことだ……》


 百音は怒りを押し殺したように言うと、そのリボルバーの銃口をマスカレイド・ゼスマリカへと向ける。

 コマンド・ゼスティニーもまたタンク部隊に包囲網を張らせつつ、ゼスモーネと背中合わせに立って火縄銃を構えた。


《撃ち尽くす──“全砲門一斉発射フルブラスト”!》

《撃ち貫く──“BブラックHホークFファニングSショット”!》


 リボルバー銃の高速連射と、火縄銃の一撃、そして四方からの砲弾の嵐が、マスカレイド・ゼスマリカへと襲いかかった。

 集中砲火に晒されたゼスマリカが、巻き上がった砂煙により覆い隠されていく。

 これほどの攻撃だ。

 いくらアーマード・ドレスといえど、ただでは済まないはずだろう。


 が、一瞬でもアクターたちが抱きかけていた希望は、安堵の息を吐く間もなく絶望へと変わり果てる。


「なっ……」

《“第一禁術ラウンドワン色欲の翅ラストウイング”》


 やがて視界が晴れていき、たゆたう硝煙の中から異形の輪郭シルエットが姿を現す。

 それは、左右に広げられた一対の翼だった。

 まるで蝶のはねのような形状をした赤い両翼は、機体の横幅よりもさらに倍ほどの長さまで広げられている。


 信じがたいことにあの巨大な翅が、あれほどの弾幕を全て受け止めてしまったのだ。

 その証拠に、漆黒のボディには傷一つない。


《怯むな! とにかく攻撃を浴びせ続けろッ!》

「くッ……了解だ!」


 休む暇も与えぬように、今度は刀を構えたスケバン・ゼスランマが右方から差し迫る。

 さらにミイラ・ゼスシオンもゼスマリカの左側に回り込んでおり、両機は左右から同時に斬りかかった。


 だが、振り下ろされた刃と鉤爪は、目標にかすることもなく虚空を切る。


「なっ……瞬間移動だとッ!?」


 厳密に言えばそれは、ワームオーブの空間圧縮能力を最大限に利用した亜高速移動なのではあるが──驚愕に目を見開く嵐馬にとっては、さして意味のない違いだった。

 マスカレイド・ゼスマリカはその後も跳躍を繰り返し、ゼスランマとゼスシオンを相手に一方的なまでの蹂躙を繰り広げていく。

 拳による直接的な物理攻撃、待針を駆使した時間差攻撃、そして再び死角をとって蹴り上げ。

 そうして宙に打ち上げられたゼスランマに姿勢を立て直す時間すらも与えず、ゼスマリカは両手の爪からヴォイドを放出させて飛翔した。


《“強欲の爪グリードネイル”》

「くッ、マリカ……ッ!!」


 嵐馬の眼前にあるモニターに、マスカレイド・ゼスマリカの恐ろしい形相が大映しになる。

 とっさに日本刀を構えて防御する。

 次の瞬間、その刃が宙を舞っていた。


(ここまでか──ッ!?)


 嵐馬が諦めかけていた、そのとき。

 トドメを刺そうとするゼスマリカからゼスランマを守るように、両機の間を赤黒い雷撃の柱がほとばしった。


「なに!?」

《黒色のアーマード・ドレスとか、アタシとキャラ被ってんだっつの! 目障りだから……さっさと消えなさいよぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!》


 飴噛大河の私情に溢れた雄叫びが、嵐馬の耳元でキンキンと響く。

 それはすなわち、チャージ完了までの時間稼ぎが無事に功を奏したことを意味していた。

 ローゼン・ゼスタイガの振りかざした全長1キロにも及ぶ長大な剣──“裂キ誇ル黒薔薇ノ荊ルフトシュトロム・フェアヴェーエン”が、暗雲の立ち込める大空を切り裂く。

 回避しきれないと判断したのか、マスカレイド・ゼスマリカはとっさにバリアフィールドを展開する。しかしゼスタイガの放った赤き奔流は、それごと飲み込まんとさらにエネルギーを増していく。

 かくして強大な螺旋はマスカレイド・ゼスマリカを巻き込みながら、10秒近くも照射が続けられた。


《ゼェ……ハァ……こ、これで流石にくだばったでしょ──》


 溜めていたヴォイドをほぼ使い尽くし、ゼスタイガが持つ雨傘アンブレラの先端から光が消える。

 敵機の撃破を確信し、大河は呼吸を整えながらも自然と口元をほころばせた。


《──う?》


 が、その喜びはたった数秒で無へと帰した。

 無防備となっていたローゼン・ゼスタイガのすぐ後ろに、マスカレイド・ゼスマリカが佇んでいたのである。


《な、なんでまだ生きて……ッ!?》

《“第四禁術ラウンドフォー傲慢の鎖プライドチェーン”》


 相手はバリアで攻撃を受け続けながらも、さらに瞬間移動によってこちらの死角へと回り込んでいたのだ──と、大河が状況を理解するのに必要な時間すらも与えず、周囲の虚空から勢いよく鎖が飛び出した。

 何もない空間から突如として出現した鋼鉄の蛇は、ほんの一瞬でゼスタイガの四肢を絡め取ってしまう。

 さらに、仮面の女皇の制裁は止まらない。


《“第六禁術ラウンドシックス怠惰の毒スロウスポイズン”》


 蜘蛛の巣にかかった虫のように、身動きを取れなくなっているゼスタイガ。

 その頭部をゼスマリカは掴んで強引に引き寄せると、腕にまとわせた禍々しいヴォイドを敵機へと

 するとほどなくしてゼスタイガは全身を痙攣させ、中にいる大河までもが悲鳴をあげる。


《キャアアアアアアアアアアッ!!!》

《大河ッ!? まずい、誰でもいいからゼスマリカを止めてくれ……!》

「あ、ああ……ッ!」


 懇願するような匠の声を聞き、嵐馬はすぐに機体をゼスマリカのもとへ向かわせる。

 だが、時はすでに遅すぎた。


《“第七禁術ラウンドセブン忿怒の力ラースパワー”──》


 “毒”によってゼスタイガに循環するヴォイドを強制的に霧散させたゼスマリカが、空いている拳に赤黒いオーラを集中させる。


《──“限界値突破オーバーキルモード”》


 そして鎖に繋がれているローゼン・ゼスタイガをめがけて、先鋭化されたマニピュレーターを勢いよく振り下ろした。




 次の瞬間──。



 マスカレイド・ゼスマリカの爪が装甲ドレスごとゼスタイガの胴体を貫き、前腕の付け根まで深々と刺し貫いていた。


《大河!? 応答しろ、大河──ッ!!》


 匠の決死の呼びかけに答える声はなく、拳を引き抜かれたゼスタイガはそのまま空中へと投げ出された。

 黒い薔薇を象ったゴスロリのアーマード・ドレスは花弁を散らすように装甲パーツを次々と外していきながら、地面に向かって真っ逆さまに落下していく──。



 漆黒の女王──“マスカレイド・ゼスマリカ”はまるで何の興味も抱いていないように、遥かなる高みからそれを見下ろしているのだった。

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