第1話
いつもの通勤経路、いつもの街中。
けれどいつもと違う速度で通勤している。
「最高に気持ちいいぜ!」
あの日から一週間経った。
そう、俺が空を飛べるようになったあの日から。
最初は驚いたがあの日の夜俺は再び妖精みたいな犬の夢を見た。
犬は俺にこう語りかけてきた。
「あなたは異能力を使えるようになりました。おめでとう。」
「しかしそれは借り物の能力、私があなたに与えました。」
なぜと俺は口に出す
「人はみな夢を見るものです。だが大人になると忘れてしまう。自分がなにをしたかったのか、何になりたかったのか。あなたも時々しか思い出せないでしょう。」
確かにな、と思う。
「忘れるだけならまだしもそれを恥ずかしい過去、黒歴史などと自ら願った夢を貶す人間もいる。」
黒歴史になら俺にもある。
「私はそれがたまらなく嫌なのです。夢に溢れた人間界の住人が夢をバカにするこの世界が。」
「なので夢を失った大人たちの中でも子供心を忘れていない者をターゲットに異能力を貸しているのです。夕べ空を飛べたあなたの様にね。」
「あれはお前が?」
先程までは俺の深層心理が童心を求めたために見ている夢かと思っていたが先日の夢といいどうやら空を飛べたことにこいつは深い関わりがあるようだ。
「そろそろお時間の様です。またここでお会いしましょう。」
「おい、待ってくれ」
「あぁ、そうそう。忘れてました。お貸しできるのは飛ぶ能力だけではございませんので借りたいときはどうぞ言ってください。それでは」
「おい!」
気がつくと近所の鶏舎から甲高い声が響いていた。
レンタル異能力 鳴上緋色 @syouga_b
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