カエルの王子さま
ALICe
カエルの王子さま
おっとり目で大人しい幸紀は地方都市の小学校に通う6年生、クラスの中で目立つ児童達が少し色気付きはじめてる一方で、彼は相変わらずトカゲ、カエル、昆虫などに夢中で、時には野外でそれらを捕まえて飼育したりしている。彼の話す事と言ったら、それらの生き物や恐竜の話ばかりで、クラスの女子には、ちょっと気味が悪がられてたりもする。また、彼がそんな感じなので、彼の友達もやっぱり似たようなスローペース、マイペース。どっちかと言うと鈍臭い感じに見える子たちだ。彼らは色気付いてきている目立つ児童から見れば、発展途上で「イケてない。」
スクールカーストでいえば底辺の方なのだろう事は大人から見ても分かるのだった。
幸紀と同じ学級の萌香は彼とは対象的に積極的に発言するし、話すことも論理的、成績もよく、女子児童のなかでは目立つ方。こちらは幸紀らとは違い、いくぶん色気付いてて、発展してる組の方に属している。そして彼女らのグループと会話の接点のある男子のグループはと言えば、やはり部活やスポーツクラブに通うような子達のグループだ。当然、幸紀ら地味グループとは接点はあまり無く、彼女らの中での幸紀たちの評価は地味で気味が悪い奴らとなってて、陰ででバカにしたりからかったりもしていた。
6月2日の金曜日午後、そんな感じの幸紀のクラスの児童に密かに事件が起こっていたが、児童たちはその事件のことを知らないでいた。。
その事件というのは、塾の帰りに萌香が行方不明になっていて彼女の親が警察に捜索願いを出していたというものだ。その時点では誘拐というのは可能性の一つとしての扱いだった。
同じ頃、そんなことが起きている事とは知らず、幸紀は以前捕まえて飼育していたオタマジャクシたちがカエルになり水槽の中が手狭になったので、余分になったカエルを捕獲した場所である放逐された田んぼの一角が池になってしまっている場所へ還しに来ていた。
その日の天気は風は無く、小雨が降っている程度だったが、連日の雨で地面の至るところに水たまりが出来ていた。
幸紀は親に買ってもらったレインウェアに長靴という出で立ちで、ゲチャゲチャと濡れた畦道の感触を靴底に感じながら進んで行った。
地方都市というのは住宅地からチョット移動すれば人気のない場所が結構ある。この池もそんな場所で、池のほかに以前は農機具などが置かれていたであろう朽ちかけた小屋があった。そして畝ぞいに最短距離で池に行くにはその小屋のそばを通らなければならなかった。
人間は自然に近い場所に来ると、普段より感覚が鋭敏になるものだが、その時の幸紀もきっとそんな感覚だったのだろう、彼はいつもと違う気配を小屋の中からなんとなく感じたので板の隙間から中を何の気なしに覗いてみると、驚いたことに中にはクラスメートの萌香が猿ぐつわをされ縛られた状態で監禁されていた。
しかも彼女を監禁した者は、もしもの逃亡を防ぐため彼女を目隠しした上に下着姿の状態でその場所に縛り付けていた。
どうやら犯人は買い物に行ったか何かの用で彼女を一時的にここに残して車で出かけているようだった。
小屋は粗雑な造作だったので、中に入ることは容易だったが、幸紀はまず自分のレインウェアを小屋の外で脱ぎ、彼女にそれを掛けてあげてから拘束を解いた。
二人は運良く犯人が戻る前にその場から立ち去ることができた。
また、二人が警察へ通報したことにより、何も知らずに小屋に戻って来たは犯人は逮捕された。
そして、この事件は捜索願いの届け出から異例の早さで解決されたことにより、幸いにも他の児童や父兄達にこの事件のことが知れることなく終ったのだった。
その後、萌香から見た学校での幸紀はと言えば、事件のことを口外しないことは当たり前だとしても、相変わらず恐竜やカエルなどの生き物の話ばかりしていて、いつもと全く変わらない幸紀のままだった。
そしてそれは彼が意識的にそうしているのかどうかは萌香には、解らなかったが、彼女にとって、今まで得体が知れなくて、気味が悪かった幸紀が今はちょっぴり頼もしく、以前より気になる存在に見えるのでした。
おしまい。
カエルの王子さま ALICe @kaiteki02
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
近況ノート
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます