第41話
第三宙域首都星、レークス。惑星を
天を突くが如き
レグナルドは分厚い
「また貴様は海賊を
「まぁ、それが俺の仕事ですから。」
上官の
「いや、
「
「その団体さんとやらが、犯罪者の取り締まりと被害者への
気に入らない。この余裕たっぷりの態度がなにより気に入らない。上官に対する
原因はわかっている、あの小娘だ。たとえ軍を
ガストンだけではない。こいつの部下ども全員が軍の
軍の上下関係は鉄の
そうすることで結果的に勝利を得てより多くの兵を生かすことになる。それが、レグナルドの
「貴様のような反社会的な人間がなぜ軍にいるのか、理解に苦しむな。」
「ヤクザの
だめだこいつは。軍の規律にも、中将の肩書にも、まったく敬意を抱いておらず、恐れてもいない。いつ辞めてしまってもいいという考えひとつでこうも厄介な存在になるのか。
この馬鹿一人だけならどうとでもなる。だが、軍全体に広まってしまえば治安維持局の存在そのものが
しかし、そこまで考えていながら兵の
数十秒の沈黙。次にレグナルドが顔を上げたとき、彼の目には
「そうかそうか、では愛国心あふれるガストン少佐に新しい任務をくれてやろう。嬉しいだろう?」
「え?あの、中将閣下、我々はついさっき巡回任務を終えて、宇宙港からまっすぐこっちに来たばかりなのですが…。」
うろたえるガストンの表情に満足しながら言い放った。
「軍もヤクザも大して違いがないのだろう?」
これ以上話すことは無い、とばかりの
「人権無視は良くない…。」
「乗るのもいいけど、外から見てもいいもんですなぁ…。」
向かい側に座る少女が
「特に、艦体正面に
「せ、せくしぃとな?」
戦艦の
「主力武器が
「うむ、そうか。さっぱりわからん。」
「同意してはいただけませんか…。いえね、マシンが破壊される場面っていうのは男の子にとって感動するところなんですよ。」
「四十をいくつも過ぎて、男の子もなかろうよ。」
「兵器に恋する男は、いつだって男の子です。」
一人で勝手に納得し、ロゴスはまた戦艦に視線を移したので、これ以上藪を突くこともなかろうとチドリも口を閉ざした。
ちらと腕時計を見やる。おかしい、ガストンが戻ってくるのが
そう考えていると、やがてガストンが背を丸めたままふらふらと歩いてくるのが見えた。
集合をかけたわけではないが、兵たちがひとり、またひとりと駆け寄ってくる。 長期航海の後は休暇がもらえるのが習慣であるが、報告もせずに勝手に休むわけにはいかない。艦長が上官に報告し、その後の指示を受け、それを兵に伝えてようやく解散だ。
ガストンはチドリの前に立ち、疲れた顔で
「どうした、早う連絡事項を伝えぬか。休暇や給料を
「いや、それはそうなんですけどね…。」
「出撃命令、もらっちゃいました。」
はぁ?と、
「どういうことですか少佐!?」
「休暇は当然の権利でしょう!」
「また何か余計なこと言ったんですか!」
「以前から思っていましたが、アホですかアンタは!?」
兵の口から次々と
チドリがばさり、と派手に音を立てて扇子を開くと、皆しずまり返って注目した。彼女が代表して話をつけてくれるのだろう、そう期待してのことだ。
「あいわかった、レグナルドに伝えい。修理、補給が終わり
ガストンがぽかんと口を開けている。何かを思い出そうとしているが、心当たりは何もない。
「修理…?どこか、弾くらっていましたっけ?」
「何を言うか、エンジン
扇子で口元を隠しながらの言葉であるが、どうやら笑っているらしい。ロゴスもにやにやと笑っている。兵たちも顔を見合わせ、その意味に気づいた者と、首をかしげるものと半々であった。
少し遅れて、ガストンもぱっと表情を明るくする。
「ああ、そうだったそうだった。エンジンに一発、きついの食らっていましたねぇ。修理にどれくらいかかるでしょうか?」
少々わざとらしい物言いだが、
「このような場合、あまり長く設定しすぎてもな…。ふむ、一週間といったところか。整備班へは
そもそも、無茶を言っているのは向こうの方だ。これくらいなら文句も出ないだろう。整備班へラウルス自治領の
チドリは扇子を
「皆、聞こえたな?これから一週間の自宅待機ぞ。事情があって出かけるときも、いつでも連絡が取れる状態にしておくこと、よいな?」
「ハッ!」
ガストン、ロゴスを含む全員が一斉に、背筋のぴんと伸びた敬礼で返す。その後、この場にいない者たちへの連絡など
一人残ったチドリに、ガストンが
「助かりました。ここで暴動でも起きたらあのクソ上官、
「よい、これは妾にしかできぬ役であったろう。それで、次の任務とは何ぞ?また巡回警備か?」
「いやぁ、それなんですがね…。」
何故かガストンは困ったような顔をして、視線を左右に揺らす。
「幽霊船退治、だそうです…。」
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