第39話
地上数十階の屋上から真っ逆さまに落下するベアトリス。何度か壁を
しかし、ベアトリスの表情になんら不安も
その時、何者かが地上から壁を伝って
「なんて非常識な!」
自らのことは
深緑色のマフラーをたなびかせ、ただ一直線に向かってくる男、その制服には見覚えがあった。第一宙域所属、宇宙連邦政府秘蔵の特殊部隊だ。
「ギガンテスか!?」
ヴァージルは腰の剣を抜き払うと、ベアトリスとすれ違いざまに
ヴァージルが屋上へ姿を現すと、待ちかねたようにカンザキとメイが、ワンテンポ遅れて未だよく状況を
「どうだ、
カンザキが興奮気味にまくしたてる。
「俺が会ったのは女の方だが──…。」
一瞬、
「いや、実験はあの女が主体となってやっていたようだし、グラサッハとは別の意味で放っておくとまずい奴だな、あれは。」
と言って納得をしたようだ。
ヴァージルはカンザキたちに見せるように、剣を水平に構えた。その先端は確かに血でべっとりと
「あの女、俺の剣を手で振り払いやがった。」
彼の腕は戦艦の装甲を引き
そんな死神の鎌に等しい剣閃を、線の細い、気だるげな女が払いのけたなどと、にわかに信じがたいことであった。
だが、ヴァージルがそんな
重苦しい沈黙の中、奴らとの再戦は避けられぬものと予感する三人であった。
ヴァージルと一瞬の攻防を
運動神経が良い、などといった次元の話ではない異質さがあった。
ベアトリスは
軽く
「ふぅん、やるじゃない…。」
まるで痛みなど感じていないかのように、ゆっくりとした動作で右手首を左手で押さえる。
すこし離れた所から、
通常、高所から飛び降りて足から着地すれば、足の骨はぐずぐずに砕け、
「おお、痛てて。足が
などと言って、交互に片足を
あたりを見回し、ベアトリスの姿を見つけて近寄ると、そこで彼女の白衣が血に染まり、右手首を押さえていることに気が付いた。
「ありゃ、どうしたんだそれ?」
まったく心配などしていないような口調である。
「ギガンテスにやられたのよ。」
お前の心配などされたくない、といった固く冷たい口調で返す。
「え?ああ、そういえば居たなあ。あのメンバーの中に。」
「そういうことは先に言いなさいよ…ッ!」
斬られたことはいい、それは己の未熟によってもたらされた結果だ。だが、いい加減な真似をされた
そんな
「ベアト、グラ、乗って!」
ベアトリスの
グラサッハが
「ちょっとこの車、小さすぎやしないか?」
「あんたの態度が大きすぎるのよ!」
猛スピードで他の車両を追い越しながら、
高速道路に出てようやく余裕が出てきたのか、横目でベアトリスを見て初めて彼女が負傷していることに気が付いた。どうして
「うわ、ベアト!それどうしたのよ!?」
「そう大きな声を出さないの。
「だから心配なのよ、怪我の
「かすり傷よ。それより、
「エンジン掛けて待たせているわ。戦艦も
自信に満ちた返答に、ベアトリスは満足げに
ベアトリスはすっかり
右手は、すでに
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