発展途上のリスク
以前アニメ映画なんかでタレントやアスリート、要するに声優としては素人を起用するものがクオリティとして酷かったという話をしました。
話題性の為に素人を起用する事で作品に傷をつける。
それはクリエイターとしてどうなのか。
純粋に見る側だった子供の頃、原作が好きだった場合には幻滅しかありませんでした。
しかし今、タレントを起用しているタイトルなんかを見るとクオリティ高いです。
え? このキャラこの人だったの?
と驚く事も珍しくない。
当人達の技量が上がっているのもありますが、使う側、指導する側の人間のスキルが向上しているんですね。
本業でない人の起用に体制が追いついて来ています。
それでもまだまだ完璧でない場面もあります。
龍が如くの柔道家など、本人が直接登場するような場合はその限りではないですけどね。
それは本人なんだから、本人の話し方がそのまま出ているのはむしろ正しい。
まあ、何が言いたいのかというと、
要するに制作物には発展途上の経過がある。
3Dがテレビアニメに取り入れられた時もそうですね。
初期の3D融合には「イニシャルD」があります。
キャラクターや背景はこれまでのアニメージョンで、車だけがポリゴンモデルなんですね。
まだ初期の頃なので、完全にポリゴンが浮いていました。
メタリックな光沢は表現できてものっぺりしている。
加えて形が変わらないのでまるでミニカー。
映像と言うものはただリアルに形を再現すればそれでいいのではなく、
見る人の間隔に合わせて歪ませる事も時には必要です(知覚像というやつです)。
正確に等角投影法しても全く迫力はない。
それでも当時としては滑らかなドリフト、デッドヒートシーンを再現していました。
あれを全て動画で描こうと思ったら大変です。
そして僕のいた現場でも若干関わりのあるアニメ「ゾイド」で本格的に導入されはじめましたね。
見た目上の違和感はほとんどなくなりましたが、まだまだ動きがぎこちない。
車と違って間接が動きます。
放送開始当時は「歩く」「走る」程度のモーションしかありませんでした。
ダメージもテクスチャ入れ換え、つまり汚して表現。形はそのまま。
戦闘も、
走ってきてジャンプしてすれ違い。
ビカビカとエフェクト。
光が収まると片方が破片を咥えている。
コンバットシステムフリーズ、で直立不動姿勢になって決着。
という流れでした。
正直つまらなかったですが、
回が進むごとに、走ってスライディング。
歩き~から走りに移行。
伏せ。
など動きも多彩に。
片腕などパーツの欠損。
ブレードでスパーッと真っ二つ。断面が描いてある。
などバリエーションも増え。
3D技術の進化がよく見える作品でもありました。
(世界的な進化ではありません。そのアニメスタジオの技術です)
技術躍進には、誰かがどこかで試し、失敗し、をしなくてはならない。
昔はそれがアマチュアだったり同人だったりしたわけですが、
技術の水準が上がるとそうもいかなくなってくる。
場合によってはただ失敗しただけの作品に、お客はお金を払う事になるわけです。
ユーザーレベルからしてみれば納得できる事ではないので、それは黙って次なる躍進を遂げてユーザーに返すしかないのだろう。
むしろ本当に気の毒なのは原作の方。
しかしそれも躍進の為に貢献できたのならば、それを犠牲というのも何か違うようにも思う。
今はリメイクも珍しい事ではないし。
ただ制作現場の者として、迷惑と言うか困るのは、
明らかに失敗している物を失敗していないかのように装う。
ここでいう失敗とは「実験的に取り入れた」ものも含んでいる。
これは業界にとってもユーザーにとっても不利益にしかならない。
一つは、反省をしないという事はそれが次に活きない。
それでも製作した人達は仕方ない。
興行的にそれを失敗と言って利するものは無いのだから。原作にとっても失礼であるし。
(当たり前ですが内部の話です。世間に「これは失敗作です」と興行するわけはない)
まずいのはそういう物を見て、「これがあるのだから。それをそのまま真似しても良いのだ」と言ってくる輩。
問題点を指摘しても「~ではやってます」みたいな事を平然と言ってくる。
じゃあ、あなたはそれを見たのか?
と聞くと平然と「見ていない」と答える。
見ていた所で本質を理解していないから突っ込んで質問すると怒り出す。
そういう戦いは永遠になくなる事はない。
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