ベテラン声優も素人に見せる

 とあるゲームがありました。


 製作したわけではなく、普通に買って遊んでいたゲームです。


 キャストには名だたる豪華声優陣。


 有名なベテラン揃いで、出演者の名前だけでも販売本数が見込めるほどです。


 遊んでみると、


 声が似ているだけの違う人か? と思うほどみんな下手。


 なんだこれは? という程。


 しかしどういう製作工程だったのかは想像がつく。


 ゲームの場合、声優さんのスケジュールの都合でみんな揃わない事も珍しくない。


 そういう場合、個々人別々に録音するんですね。


 掛け合いも相手のいない状態で、自分のセリフのみを喋る。


 おそらくそのゲームの台本は、各個人のセリフだけを抜き出して台本にしたと思われます。


 つまり声優さんは演技をするに当たって、相手のどんなセリフに対してこの返しをしているのか分からない。このセリフで相手がどんな反応をするのか分からない。


 セリフにどんな感情を込めればよいのか分からない状態で喋っているのです。


 加えて、ゲームがどんな世界で、キャラクターがどんな個性なのかの説明もなかったと思われます。


 ただセリフが並んでいる物を読み上げているだけ。


 しかし声優さんもプロなので、想像力で自分の中にキャラクターを作り上げて演じています。


 しかしそれが人によってバラバラ。


 かたや「ドラゴンボール」して、かたや「ちびまるこちゃん」をして、それが互いに掛け合うものだから、まるであさっての方向に喋っているかのよう。


 学芸会か!?


 というようなお粗末なものになっていました。


 そしてこういう現場はほとんどが上がりを見て「有名声優も大した事ないな」とか言っているわけです。


 役者のスキルを引き出すのは監督の裁量だという分かりやすい例ですが、


 これは録音だけでなくすべてに言える事です。



 僕はアニメ会社にいた事もあり、アフレコの経験もありますが、


 声優さんは事前に資料を貰って、当日までにキャラを作り上げてくるんですね。


 事前にいかに資料を揃えられるかにかかっていると言っていい。


 当日になって補正しようと思っても無理です。


 そんなすぐに役作りできるものでもなく「そんな事急に言われても」となるわけです(できる人もいますけど)。


 これは実際に会った例ですが、


 台本の監修が間に合わず、録音当日までに揃えばいいんだろう~、という感覚で当日になって完成台本を渡し。


 修正だけでなく加筆もされていて、その中に若干卑猥な言葉が含まれていたので、当日になって「こんな事言えません」と断られた、という事例もあります。



 絵でも同じ、後から修正いれられてレイアウトが狂う事もある。


 いかに作業者の能力を引き出せるのか、は監督の力量です。

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