熟練と管理は別物

『ベテラン声優も素人に見せる』


 で作業者の能力を引き出すのは監督の力量という話をしましたが、


 なら作業者の意思をただ尊重すればよいのか? という単純な物でもない。


 ライターが「こういうものを書きたい」。


 絵描きが「こういう絵にしたい」。


 というのを全て聞き入れればいいというものでもありません。



 ライターが文章ですべてを表現したくても、演出効果で見せているものを文字でもくどくどと読まされればくどいものになります。


 以前にも、


 デザイナーチーフがパートのリーダーもやっていて、一通り仕切っていましたが、


「『照準』や『チュートリアルアイコン(ここで○ボタン押せ! とかのボタンの絵)』など、ゲーム的な絵を入れたくない」


 要は映画的な絵を作りたいのでそういうのは見苦しい、との方針で進めていた事がありました。


 それも分からなくもないのですが、


「ここでボタンを押さなくてはならない事をユーザーにどうやって伝えるのですか?」


 という質問には「それは課題」との回答。


 結局そのまま何の対策もされずに、「分からないからアイコンを出す」という決定。


 アイコン出さない前提で作り続けて結局出す、という最悪のパターンです。


 他にも魔法の効果で、見た目のカッコよさを追求するあまり、単調な魔法しか作れない。


 一発ですごい視覚効果のあるものばかり重要視される。


 小さくても、それを複合して組み立てて遊びの幅を広げる、というのは初めからあるコンセプトです。


 デザイナーの感覚ではそれが分からなかった。


 とにかくすごい絵を作る事でしかクオリティを図れない。


 まあそれですごい物を作ってくれるのならよいのですが、魔法は何百種類も必要です。


 そんなすごい物を何百種類も用意できるはずもなく、結局間に合わないのでクオリティを落とす決定。


 クオリティが高い事をウリに作っているものからクオリティを取る、という最悪のパターンです。



 絵がうまければディレクションができる、というのは全く関係のない話です。

 (プログラムでもシナリオでも同様ですが)


 上記の例では僕は一作業者に過ぎず、他会社なので口を出す事はできませんが、結局はそういう人間を管理者に据えている責任者の力量です。

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