素人以上 先生未満

 とあるゲーム。


 フィールドを歩くのが基本のゲームだが、ストーリーに添って人に話し掛け会話をする。


 分量は少ないとはいえ、それなりに台詞はある。


 そのゲームはリニューアル版で、前回に加え続きの話が追加されて分量的には倍になるもの。


 シナリオがぼちぼち追加されていくわけですが、僕はさっそく誤植フィルターにかけてみた。『ゲームのお仕事』でも登場しているやつです。


 そしたらバラバラと検出されました。


 まだ書きはじめなのでほとんどは前作のもの。


 検討→見当

 などの基礎的な誤植が多い。


 ゲームでは本格的なアドベンチャーゲームを作っている所でも誤植チェックは出版社には及ばない。


 ましてや軽微なバグをやむを得ず通さなくてはならないようなゲームでは尚更。


 誤植などそのまま発売される事も珍しくない。


 なのでゲームでは人の手に頼らない。


 シナリオをコンバートする際に自動チェックするツールを導入している所もあります。


 僕もそのうちの一人なので、チェック結果と合わせて紹介。


 ディレクター陣はこれは良い、と作業フローに組み込む。


 しかしライターは「いや、誤植がこれだけのはずはない。もっと沢山あるはずだ」と誤植自慢を始めた。


 実際誤植を入れたまま発売されたのだし、ツールは全部検出してくれるわけではないのだから、言ってる事は間違っていないのだが、


 誤植は入るのが当たり前、という体制を作らんばかりに頑なにツールを使わなかった。


 一度は発売されているものだから意地にになる気持ちも分からなくはないのだが、


 代わりに自分が毎度チェックしてバグ報告する羽目になる。


 作業フローとしてきまっているのでいちいち注意しに行かなくてはならない。


 そこまで頭が悪いはずはないので、ワザと使わない者にそれ以上注意する事は、より事態が悪化する事はあっても良くなるとは思えない。


 まあそれは僕が逐一バグ報告を上げればよいのだけど、バグ報告というのはチケット管理されている。


 要は駐車違反の切符のように、バグ切符切られたらそれが叱るべき所へ送られてチェックを受け、担当者に回って修正。新しいロムを作って修正が間違いなくされたかを確認。時には戻っていないかを後になってもう一度確認。


 深刻なバグも多数上がる中、チケットの数が無駄に多くなる。


 迷惑をかけるのは僕だけではない。


 そのライターの書く物はよいものだし、僕も好きだが、我がままを言っていいほどの大先生かと言えばそんなわけもない。


 それが社員となると「なんだこの現場は」という判断をするしかない。


 まあそういう子供っぽい所からあるからこそ書ける物ってのもあるのでね。


 ホントの所、塩梅が難しいのです。

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