どこでもセーブ仕様
以前PCゲームを家庭用ゲーム機に移植するプロジェクトで、販売元の要望として
「どこでもセーブができるように変更」というのがありました。
移植前のゲームでは一日の終わりにセーブして、翌日朝から再開できるようにする仕様だったのですね。
それをメニュー画面からいつでもどこでもセーブできるようにして欲しいというものです。
ちなみにどこでもセーブできるようにすると開発の手間が増えます。
場所を固定しているなら、決められている数か所できちんとセーブロードができるかを確認すればよい事になりますが、
どこでもでるとなると、プレイヤーはどこでセーブするか分からない。
いつどんな状況でもちゃんとセーブができるか、再開ができるかを全て確認しなくてはなりません。
不具合もそうですが、アクションゲームともなると、死ぬ直前にセーブでできたりもするんですね。
ロードして再開すると開始直後に死ぬ。続行不可能、という事態にもなりかねない。
それならまだ分かりやすいが、残りのアイテムではクリア不可能、またはとてつもなく困難、という事もあり得ます。
それらを全て確認できないと発売できないので、とにかく確認の人件費がかかる。
リアルに開発に金がかかるようになる。
じゃあその分予算を出すのか? というと中々そうもいかない。
なので開発現場ではその手の変更は渋る。
しかし版元としてはどこでもセーブができる事はユーザーにとって良い、よくできたシステムであるというイメージがあるんですね。
でもまあアドベンチャーゲームならそのリスクもかなり減るのでそういう変更も珍しくない。
そんなわけで修正して、完成前に見せるわけですが、
報告の中に、
「選択肢を選んで正解、間違いに分岐する場面があるんですが、選択する前にセーブすると間違ってもやり直せてしまいます」
とだけ書いてあった。
まあ当たり前と言えば当たり前。
プレイヤーがなぜ「どこでもセーブできる方がいい」というとそれができるからなんだが。
それをやりたくて変更したんではないのか?
移植前のゲームで、なぜ固定セーブだっのかというと、別にそういう技術が無かったわけではなく、そうなってはゲームの難易度に影響するから。
だから固定セーブにしてあるのね。
しかも「やり直せてしまいます」としか書いてないので、なんとかしてほしいのか戻してほしいのか、どう対応したらいいのか分からない。
「はい、そうですね」「バッチリじゃないですか」とでも返せばいいのか。
それ以降沈黙してしまったので結局そのままですが、
要は素人が仕切るとそうなる。
でもこれは珍しいことではなく、ゲームの中を探せば少なからずそういうものの一つや二つあったりする。
大手が出すゲームならその頻度はかなり減るが、それでもゼロではないのが現状です。
こういうのがよく「遊び手側の気持ちが分かっていない」とか言われたりするんですが、僕の考えは少し違っていて、
ただゲームが好きなだけの遊び手が製作側に混ざってきた時代になってきた、のが主な原因です。
好きな要望を出して、結果は作り手側のせいにすればいい、感覚のまま。開発のスキルがないから販元に就職する。
まあ誰でも外す事はあります。
しかし決定的な違いは、その結果に対して反省するかどうか。
結果を予見するには経験が必要です。
しかし今のゲーム、若い世代の方が分かりよいだろうと、経験のない若い者に任せる現場もあるんですね。
古株が若い者達の感覚を取り入れる事も大事ですが、
若い世代が、先達、先輩の言う事に耳を傾ける事が重要である事は昔から変わらないはず。
というわけで、年金はきちんと払いましょう、とあまり関係のないオチに着地。
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