何の権利があるのですか

 ここでも評価の仕方や、面白い物が注目されるわけではないシステムはどうなのか、みたいな投稿がありますが、


 それらはまず例外なく自身の作品が注目されない事に対する疑問です。


 自身の作品が注目されている分には他人事、むしろそれ処ではない。


 しかし自分が一番になる事はそうそうない。


 文章もメタメタ、何を伝えたいのかも分からない。それが自分よりも注目を浴びている、と感じる事は必ずあると思います。


 しかし仲間内で★をつけあい、自分達だけの楽しい空間を作って何が悪いのか? と言えばそれもその通りです。


 公共の場、どのような楽しみ方をするも個人、団体の自由です。


 それを他人にとやかく言われる筋合いはない。



 自分達が楽しむ事であなたに迷惑をかけていますか?


 何の権利があって意見をするのですか?



 とこういう事なんですが、実は我々ゲーム業界の人間にはその権利があります。

 実際に迷惑を被っています。



 というのもゲーム業界のシナリオライターには出版業界から流れてくる者もいるからです。


 出版業界で続けられなくなった人が、仕事を求めてゲームのシナリオやる例は珍しくない。


 当然ですが皆が皆、以下に示す例に当てはまるわけではありません。しかし私がそういう人間と少なからず相対してきた事も事実です。


 文章力がメタメタ。何を言いたいのかも分からない。とそんなのはマシな方です。


 「メカや装備の設定を書いてくれ」と発注したら「これはアニメの〇話に登場した~。誰々が設定を考えた~」誰がそんな裏設定を書けと言ったか。


 モブキャラが100人以上登場する。オープニングが主人公一人に対してあと全員モブキャラ。


 一つの場面に3人しか並ばないのに7人登場する。


 誰が誰に向かって話しているのかを明確にできないからか、セリフでやたらと話しかけている相手の名前を呼ぶ。音声入るととてつもなくウザイ。


 フラグを立てる条件が指定してあるのに、それを使って分岐する場面が一つもない。


 文章書いてあるだけで演出が一切入っていない。


 もう基本的な、使える使えないのレベルです。

 必ず言うのが「プログラマーじゃないから」。

 「いやプログラムの話はしてないよね?」と返すと「……プログラマーじゃないから」と壊れたテープレコーダーのように同じ言葉を繰り返す。


 仕様切れないならこっちにまかせてくれればいいのだが、自分で仕様を切りたがる。というよりはおそらく仕様の通りにあげる事ができないからだろう。

 自分が書く物がどのように使われるのか、どのような条件の下で書かなければならないのか、をよく理解した上で書くのはどんな仕事でも当たり前です。


 挙句の果てには「自分は天才だから」と、初めて書いた物が採用された事を取り立てて言う。


 しかしここにいる以上、天才である事は当たり前。


 まだゲームどころかコンピューターの学校さえなかった頃に、自分で学んで形にしてきた。初めからデジタルが理解できたからやってこれた世界。

 天才である事はここでは普通。


 そんなライターを連れてきた人間も、自分の目が狂っていたと認めたくないのでそれを押し通そうとする。


 最後には「そっちで直してくれていい」とこっちで書き直す羽目になる事も。『ゲームのお仕事』でも紹介しているエピソードになるわけです。


 タダで仕事をしてやっているのに「なに勝手に直しとんだ?」みたいな話になると、申し訳ないが、次からは面白くない事までは面倒を見てあげられない。


 もちろん忠告くらいはするがそのまま作り続け、社内品評会になって「何が面白いの?」とざんざんき下ろされ、結局ギャラだけ払って、シナリオ会社に新規に発注、なんて事もありました。


 数百万円と数か月分の人件費の損失。

 ディレクターが、そんなライターを引っ張ってきたのは出版社のお墨付きがあればこそなので、正直「いったいどこの出版社で執筆をなさっていたのですか?」と聞きたくなるのも事実。もちろん出版社が悪いわけではないのですが(おそらくお墨付きをしている事実もないはず)。


 一応念の為に言っておくと今まで経験した中では最も底辺に属する例です。


 こういう経緯の上で作家の質の低下を恐れているのですが、余計な心配であるならむしろそっちの方がいい。

 「今までの状態がこれで、そこから更に質の下がったのが来るの~?」という事ならそりゃ懸念するのが普通でしょ。

 願わくは自分に当たらない事を祈るばかり。


 出版業界内では電子書籍化の経験は実績として認められないと聞いた事はありますが、ゲーム業界のディレクターがその事情に明るいとは限らないのです。


 それこそ無料と有料の違いが分からない。

 小説投稿サイトはユーザーによって成り立っている、という思想のまま人からお金を取って買って頂く物を作ろうとする。


 もちろん皆がプロを目指しているわけでも、プロになるわけでもないですが、その中から出てくるであろう一部のプロは必ず周りの人間と同じである事を取り立てます。


 実際既に「初めからプロの仕事をしなくてはならないなんて知りませんでした」と言ってくる新人も現れています。

 出来ない事とやらなくていい事は違う。プロとしての自覚がない。



 まあ何とかしようなんて大それた事は考えてないですが(クリエイター思想を一般ユーザーに浸透させる事に別段意味はない)、


 そういう考え方もあるんだという記事としてはそれはそれで面白いかもしれない、という事で。

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