君の知らない僕を見つけてください
赤羽レン
何でもない幼なじみ二人のプロローグ
0.1 04/03 09:04 なんのひねりもない
「起きて…起きてよ!
うーん…まさか夢にまで出てくるとは、お前も俺のなかの優先度上がったな…
「優先度ってなによ…、起きて!夢じゃないよ!ほら?本物でしょ?」
いきなり体に重さがやってきて温かさに包まれる。
温かい?あれ?もう夏だっけ?部屋締め切ってたっけ?
おなかの上にはやわらかく温かい感触、目の前には丸い影。
薄目を開けるとそのふたつを認めた。
薄目を開けてしまうと目に光が入っていやでも目を開いてしまう。
するとそこには、数日会っていなかった幼なじみの顔があった。
「おはよ、なんだこのあったかいクッションは?重いし暑いし…」
なんでここで自分の口からクッションという言葉が出てきたのかはわからない。ひとつわかることはクッションと表現したことが間違だったということだ。
この構図を説明すると、俺が仰向けに寝ているおなかの上に
「誰がクッションですか?もう、最愛の幼なじみの私をクッション呼ばわりするなんて、もう集とは縁を切るから」
顔をぷいっと横へ向ける火和。かわいい。
「ごめんごめん、
この言葉が彼女のお気に召さなかったようでため息をつきながら言った。
「もう、いい。早く起きて、朝ごはん出来てるよ?」
「なんで火和がいるんだ?」
少し時間は進み、我が家の二人掛けの食卓。
そこで質問していた。
「なんでって、聞いてないの?おばさんから」
「いや?何も聞いてないけど?見たところうちの鍵も持ってるみたいだし、こんな朝食作れる食材はなかったし」
目の前に並べられた朝食は一言で表せば『旅館の朝食』だ。ごはんメインのたくさんのおかずがたくさん並んでいる。
火和は口を開かなそうなので話題を変える。
「それにしてもお前にこんな料理スキルがあったとは、おどろいた」
「ありがと…」
たぶん照れているのだろう、耳が赤い。
「このだし巻き卵おいしい!母さんの味と同じ?」
さらに赤くなった。首筋まで赤みがさしている。
「おばさんに教えてもらったの」
照れながら下を向いて言う。
「へえ、道理で似てるわけだ」
「その時に頼まれたの」
火和はこっちをまっすぐ見つめて言った。
「何を?」
そしてさらにうつむいて続けていった。
「うちの息子をよろしくね。って頼まれた」
このセリフに俺は朝食よりも放心を実行せざるを得なかった。
ここで自己紹介をしておこう。
俺の名前は
年齢15歳、誕生日は5月10日。高校1年になる。
身長167センチ、体重53キロ、視力は左右0.5ずつくらい。
髪の毛はちょっと目にかかるくらいの長さ。
特技はサックスと立ち幅跳び(立幅は3メートル50近くとんだ)。
苦手なものは宿題、早寝早起き。
そして俺の幼なじみの紹介。
名前は
年齢15歳、誕生日は8月2日。同じく高校1年になる。
身長150センチ、体重は軽め?たぶん45キロくらい、視力は左右2.0以上。
華奢な体に少し大人びた顔。髪型は黒髪ストレート、もとの良さをさらに引き立てる。
特技はトランペットと料理全般お菓子作りまで。
苦手なものは蜂と金髪。
俺と火和は幼稚園より前から家が近く家族ぐるみで仲がいい。
小学3年までは毎日一緒に遊んでいたくらいだ。
今でも互いの家を行き来するくらいにプライベートは少ない。
最近俺は火和の部屋に入っていないが。
俺らは吹奏楽部に所属していて、まあ2人とも頼りにされる先輩の部類だったと思う。特技にサックスとトランペットと書いたのはそのためだ。
朝の経緯を説明しようか。
昨日父さんの仕事の関係で名古屋に転勤になった。
家事が何もできない父さんと一緒に母さんもついていくことになったが、家を売る気がないのと俺の高校の合格が決まってから急に決まったことだったので、両親は名古屋へ、俺は家に残ることになった。
両親は3日前に名古屋へ発った。だから俺は残りの5日までの春休みをダラダラ自堕落に過ごそうと思っていたのだが、母さんが妙なお願いをしてくれたおかげで入学式2日前にまっとうな生活に戻れそうだ。ということだ。
火和とはもうずっと長い付き合いだが、春休みの間は会っていなかった。
なんでも、火和の友達の家の別荘で4人でお泊り会をしていたらしく、よほど楽しくてテンションが上がっていたのかその別荘から電話がかかってきた日もあったくらいだ。
いつも俺にはそんなキャラ見せないだろってくらいの声の明るさではしゃいでたな…。
そろそろ場面を食卓に戻そうか。
さっきの爆弾発言があってから火和は下を向いて黙々と料理を口に運んでいる。
俺はさっきの言葉の続きはないのかと多少挙動不審に、つまり火和をチラチラ気にしながら料理を胃袋に流し込んでいる。
まあ、俺はあまり我慢が利くほうの人間じゃないので気になって話しかけてしまうのだが。
「なあ」
「…っ!な、なに?」
これは明らかになにか隠してる時の反応だ。だって耳にかかってる髪をいじりながら目を合わせようとしていないから。
「母さんが言ったことなんか真に受けなくてもいいんだよ」
「いや、集が心配だから毎日ご飯作りに行く!」
彼女の意思はとても固いようだった。
「でも、家のことはどうすんだよ?少なくともおじさんはよくは思わないだろ?」
「説き伏せてみるし」
「言い訳はあるのかよ」
「花嫁修業って言えば何とかなるでしょ」
「それって何とかならないと思うよ…」
「じゃあ言い訳考えてよ」
「なんで俺がそんなことに肯定的でなきゃいけないのよ」
「愛しの幼なじみのため?」
「やめてくれ、ほんとにそう思えちゃうから…」
「私は大歓迎だよ?」
はあ、やめてください火和さん。そんなセリフを首かしげて言わないでください、かわいいから。
そんな甘い言葉にあえなく俺は撃沈されてしまうわけで、もう言葉もなにも出てきません。
割と真剣に火和を愛せばどんな感じになるかを考えてしまってバカなことを口にしてしまう。
「俺がお前を愛したらお前はどうする?」
「えっ?そうだなぁ?」
あっ、そんなに真剣に考えなくていいですよ火和さん?
「えっと、それからの生活を疑似夫婦生活にして見せます!」
そんなすごいことを宣言する俺の幼なじみ火和さんなのでした。
君の知らない僕を見つけてください 赤羽レン @altoren02
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