第6話

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 私は研究所を出た。秋本は明日、同僚の片岡という人間に見つけてもらえるだろう。特に悪い事をしたとは思わない。これが仕事だし、遅かれ早かれ人は死ぬ事になっている。運命というものがあるなら、それは交差点の途中でコンタクトを落としたことをきっかけに誰かと出逢ったり、悪さをして金を築いていたが、ある日自分の人生に疑問を抱き旅に出て絵を描き始めることではなく、それはたった一回、人生の最後にやってくる死だけだと思う。

 私はクラウンを止めた場所まで歩く。途中、自動販売機で缶コーヒーを買った。ロックを外し、コートとマフラー脱いでそれを助手席に放り込むと運転席に身体を滑らせる。

 無音の車内で、プルトップを引き缶コーヒーを開けた。コーヒーを似せて作った模造品の香りがした。その匂いが作り物の埋立地の景色に重なる。

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下手な嘘 機戸ひいら @kido_hiira

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