toward the happy end with GORIEST 【1】
7月4日(火) そのシチュエーションが想像できない
昨日、妹のはるきさんの消息を聞いて肩を落とす天久保さんに、私は声をかけることができなかった。
そして今日も、どんな風に声をかけたらいいのかわからない。
デスクのPCに向かいながらも、ふとした瞬間に手が止まり、天久保さんの悲痛な面持ちやとぼとぼと研究室に戻る後ろ姿を思い出してはため息が出る。
私があれこれ悩んだところで何の解決にもならないのに――。
そう思っていたら、向かいの席のゴリエスト松代さんに声をかけられた。
「それにしても、天久保君の妹さんが異世界転移者だったなんて知らなかったよ」
私が天久保さんのことを考えているのがわかったんだろうか、ってドキッとした。
けれど、もはやこのもやもやは自分一人では抱えきれないと思ったので、天久保さんから聞いていた兄妹の話を松代さんに話した。
ゲジ眉を寄せて難しい顔で聞いていた松代さん。
何度もうなずきながら、ゾリゾリとした髭あとが広がる顎を指で挟むように手を当てていたけれど……。
突然ぱっと顔を上げて「そうだ! 天久保君を元気づけるために三人で飲みに行こうか」と言い出した。
私と天久保さんとゴリエストで飲みに!?
その面子で飲むシチュエーションが想像できなくて答えに窮していたら、松代さんが苦笑いした。
「こないだまた食事に行こうって梅園さんを誘ったけど……。run-run以外の店に僕と二人で行くのも梅園さんは嫌だろうし。天久保君を誘えば彼も気が晴れるだろうし、いいかなって思ったんだけど」
その言葉に、なぜだか心がちくんと痛くなった。
もやっとしたけど、「そうですね」って答えてしまった。
昼休みのうちに松代さんが天久保さんに声をかけて、早速今週の金曜日に飲みに行くことになった。
この三人でどんな話をすれば盛り上がるんだろうか。
天久保さんは元気になってくれるだろうか。
そして……。
松代さんは、こないだのお誘いに私がはっきりした返事をしなかったことを気にしているんだろうか。
あーあ。
このもやもや、金曜日に飲みに行けばすっきりするのかなぁ……💦
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