エピローグ

 月面観測基地の詰め所で、

 彼女は日常の記録を付けるタブレット端末に、

 業務日報への記入を終えた後、プライベートな日記をつける。


 今はとて

 天の羽衣着る折ぞ

 君を哀れと

 思ひ知りぬる


 の返歌ってことにしておこう。


 今遙か

 月より眺むるその碧玉

 キミを思うはかぐや姫

 思いを馳せる七夕の夜 


 こんなものかなー? 理系だもん。

 こんなものだよなぁ。

 譬えこんなにも距離が離れていようとも、

 私とあなたは確かな絆で繋がっている。

 遙かに見えるあの星で、

 あの事を打ち明けられたのは後にも先にもあなただけだし。


 あー、あの時あなたに出逢えてよかった。

 私からのお土産は、

 この15センチっくらいの月の石にしようっと。

 

 記録を付けてパタリと端末を閉じて、

 キューポラの向こうに燦めく碧い惑星を眺めて微笑んだ。


         お   わ   り

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

阿字観 χαρά Scar Hetero (へてろ) @Hetero

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ