プロローグ

第1話 「リリシスの物語」

『幾千万の波を越え、最も紅き船が火の帯を引いて行く。


 悠久をたたえる海は深く、蒼く。魚たちはうねりの中を迷い、惑い、喰らい合う。


 焔立つ冥界より大魚が浮かび来て、星の嵐が大洋に降り注ぐ。


 熱き風の荒ぶ中、勇者は大魚に跨り。


 新しき扉の鍵は、夜を切裂く。


 大魚が常闇の眠りに就くと、拡散する島の男は雲の切れ間を目指して、小舟で漕ぎ出でる。



 ――――――――紅暗き安らぎの灯を、携えて。

 永久の祈りの糸を赤く、赤く…………紡いで』



〔「リリシスの物語」,未来伝承より〕

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