5thG ギルドテキサスファイア編
第54話 企画会議
「営業成績の方は第二弾の大型パッチ、カーバンクル実装からユーザー数が順調に回復。パイロットスーツ等によるアバターでの課金の売り上げも好調で、昨日の全打ちでも第三開発として、よい成果を報告をすることができました。これも皆さんのおかげです。本当にありがとうございました」
会議室に集まった第三開発室及び第四開発室のメンバーは麒麟の話を聞いてホッと胸を撫で下ろす。
「運営の方もこの半年で安定軌道に乗り始めてきたと思います。もうじき一周年記念の準備もしなければならないのですが、この辺りで開発室の皆さんに休暇の方を回していきたいと思います」
「やった休みでふ!」
「ここ半年は週一休みだったでゴザったからな」
「はい、皆さんのご協力本当に感謝しています」
「こうやって良い結果が出てよかったでゴザル」
「第四開発室の方も本当にありがとうございます。皆さんの協力なしで再建はなしえなかったと思います。第四開発室の方は休暇が終わりしだい半数ほどは元の第四の業務に戻っていただき、まだ半数の方は第三に残留してもらうという形になりますが、引き続きご協力のほどよろしくお願いします」
麒麟が席に座ったまま頭を下げると、第四開発室のメンバーも頭を下げる。
皆その顔は誇らしげである。
「ただゲームの方はお休みすることはできませんので、ここから企画会議の方に入ります。先週私と矢島さん、遼太……平山さんの方で今後のイベントの計画をしました。まず来月に向けてシーズンイベントを一つ入れまして、その月の後半にもう一本ユーザーさん同士の企画が入っています。ここからは平山さんお願いします」
「はい」
遼太郎は立ち上がり資料を配布していく。
「資料を見ていただければわかると思うのですが、現在ユーザーさんから対戦色が強くユーザー同士で協力するという、ネットゲームでの醍醐味であるコミュニケーションが希薄であると、長くご指摘を受けています。ですので、今回のイベントはバトリングと題しまして、小隊VS小隊でランクマッチ形式にしようと思っています。簡単に言えばトーナメントですね。まず三週間の準備期間をとりまして、ユーザー間で三人の小隊を組んでいただきます。その後本戦が開始となり、約一か月間の間小隊同士で戦闘を繰り返し、最終的にポイントが一番高ったチームが優勝となります」
「優勝景品は一人一隻ずつ新型軽戦艦でゴザルか。なかなか太っ腹でゴザルな」
「はい、それ以外にも参加するだけでも有用なアイテムの配布をしますので、できる限り間口を広くとりたいと思います」
「それ、レベルカンストしてないユーザーは参加できないんじゃないでふか?」
「いえ、レベルがカンストしているベテランユーザーをAリーグ、カンストしていないルーキーユーザーをBリーグに分けて行います。Bリーグに関しては、戦闘を運営側が用意した機体を使ってもらい、アーケード戦闘に近い形で行ってもらうことになります」
「ふむ、廃人たちはAリーグで鍛え上げた自分の機体を使い、Bリーグのまだ慣れていないユーザーたちはアーケードバランスの機体を使うということでゴザルな」
「はい、Aリーグの景品は強化系パーツや資金、Bリーグは育成アイテムを多く設定しています」
「でも平山ちゃん準備期間三週間って長すぎない? こんなの三人組とかすぐ決まっちゃうんじゃないの?」
「ええ、ですのでその間は練習期間としてポイントはつきませんが実際と同じ形式で小隊同士の戦闘をしてもらおうと思っています」
「そ、それよりコミュ障のぼくみたいなのはどうしたらいいでふか? 小隊組めなんていわれても口下手でふから組めないでふ」
「はい、そのため岩城さんにマッチングシステムを改良してもらいバトリング専用のシステムを作ってもらいました。このマッチングシステムを使うとコンピュータがランダムで小隊編成と、対戦相手との日時の日取りをしてくれます。日取りがうまくいかない場合や、小隊メンバーをかえたい場合は小隊を解散して再度マッチングを行うことができます。勿論日取りだけ変えたいというのもできますよ」
「コミュ障にも優しいでふね」
「はい、ただあんまりコロコロかえられても辛いので、一日にマッチングを使用できる回数の上限はつけましたが」
「まぁ、とりあえず試しで戦ってみろってことでゴザルな」
「はい、それでウマがあえばそのまま小隊で本戦まで練習していただければいいですし、気に入らなければ三週間の間にベストな仲間を見つけていただければ」
「なるほど」
「勿論マッチングだけでなく自身で勧誘したり、フォーラムの方で募集できるように準備も整えましたので、その辺りのコミュニティツールはユーザーさんがうまく使ってもらえればと思います」
「それじゃあ超強い人三人で固まっちゃうこともあるんじゃない?」
「その可能性はあります。ただ、やはり小隊戦なので各々の強さより連携が重視されると思います」
「じゃあずっと一緒にやってるギルド員とかが強いんじゃない?」
「ええそうですね、一緒にやられてるフレンドがいる方は多分強いと思います。一応一度も小隊を組んだことのない人と組むとポイントに色がつくようにはしてます」
「ふむ」
「Bリーグに関しては楽しくわいわいやってもらえればいいと思います。Aリーグは恐らくトップを目指される方は強い方に声をかけて頂点を目指していただければという仕様です」
「これは各サーバーのトップを決めたらそのトップ同士で頂上決戦するのかい?」
「一応最後ポイントの高かった上位二チームで決戦はやるつもりなんですけど、ただポイントでしかチェックしてないので、もしかしたら同サーバー対決になるかもしれないです」
「なるほどね、ちょっと過密サーバー有利かなって仕様だけど、このゲームはどこもアクティブが似たようなものだから大丈夫だろう」
「これなら商品さえ用意しとけばいいだけだから簡単でふね」
「ポイント集計のプログラムは大分前にやろうと思って、結局流れたイベントのものがあるでゴザルから、実装するのは簡単でゴザル」
「それでなんですが、初めてユーザー同士で組ませるイベントなので、ある程度のユーザー間でのトラブルが予測されます。なのでAリーグとBリーグに開発側で何人か潜り込んで実際にゲームしてプレイリポートを作りたいんですよ。なので一応僕はBリーグに行こうと思ってるので、どなたかAリーグの方に潜り込んでいただきたいんですが」
「え、Aリーグって修羅の国の方でふよね……」
「拙者が原因で負けたら、メンタル折られるくらいクソミソに叩かれるでゴザル」
「一応カンストした社内アカウントも用意してるんですけど、慣れてる方がやりやすいなら個人アカウントで入ってもらってもいいです。ただ岩城さんも言っておられるようにAリーグの方は非常にレベルが高い方たちばかりなので、足を引っ張ると怒られます。ですので、僕と真田さんで休暇の兼ね合いも考えながらお願いしたい方を二人ほど選出しました」
そう言うと全員が目をあわせないように壁や机の方を向きだした。
「えっと、まず一人は岩城さん」
「むむむむむ、無理でゴザル!!」
「頑張って下さいね」
麒麟はにこやかな笑みを浮かべ、辞令だと伝える。
「えっと、もう一方は指名するのがはばかられるのですが、矢島さんにお願いしたいと」
「はっ?」
矢島は腕組みしながら完全に蚊帳の外だと思ってニヤけていたが、いきなり飛び火して慌てる。
「一応理由としましてはトラブルに的確に対応できるという点と、メタルビーストの操作が開発で一番上手いと言うところから僕と真田さんで選ばせてもらいました」
「お前、企画会議の後なんか話してるなと思ったら、そんな裏取引を!」
「矢島さん、これは仕事ですから。頑張ってくださいね」
麒麟はエンジェルスマイルを矢島に向ける。
「し、仕事が……」
「私がやっておきます。気にせずイベントを楽しんでくださいね」
「さ、真田女史~」
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