喘ぎ

カーテンから夕暮れの赤い日差しがさしている。

俺はベッドに寝転んだままスマートフォンを当たっていた。

特に見たいものも無くネットのニュース欄をただひたすらにスクロールするだけ─。

そんなものが頭に入るはずも無く、俺の頭の中では今日見た冴羽の姿が浮かんでいた。

やけに着飾って、化粧までしていて認めたくは無いが世間一般でも可愛い部類の冴羽は他の女より輝いて見えた。

冴羽が笑顔を向けている先は俺では無く冴えない眼鏡の男ってことには少し胸がつっかえる所がある。

あの笑顔を、向けて欲しい。

それだけのことを伝えきれない。


不器用だから。





愛されることだけが、俺の存在意義




愛してくれる者全部を蹴落としてまで手に入れたい愛なんてこの世には無い。


冴羽を奪いたいなら、尚更だ。


それはあいつが愛を与える人間だと分かっているから。



この気持ちを伝えれば冴羽はもっと俺から遠ざかっていく。


それが痛い程分かるから、俺は動けない。





「──今頃、二人で家の中……かな」







「今日は、親帰ってくるの遅いから」


艶めかしく微笑んでそう伝えると私はベッドに腰掛けた。

「カーペットの上って痛くない?ベッドに乗ったら?」

ぽんぽんとベッドを叩く。

「えっ!?あ…うん…」

まるで関節を無くしたかのように動く田中君をくすくす笑いながら見守っていたけど、田中君がベッドに座り直すと同時にさり気なく手に触れる。

「…田中君、私…田中君のこと、好きだよ?」

彼の耳元でゆっくり、優しく吐息混じりに伝え、バレないように強ばっている田中君の下半身を見ると見て分かるくらい大きくなっていた。


片手で笑みが溢れてしまっている口元を隠す。


──私で、こんなにおっきくしちゃって…



「っっっ!」

突然、田中君が私をベッドに押し倒した。

きゃっ、と小さく悲鳴をあげて顔を上げると、田中君の真剣な顔があった。


「僕も、男です…!」




「あっ、あッ!」

「霞っ!霞ッ!!!!!!」

ゆさゆさと腰を振られる。

この快感が私は好き

「もっと、もっと欲しいぃっ!」

田中君の背中に抱きついて叫ぶと田中君は一層激しく私を突いた。


そして、私の中で田中君は果てた。


一晩中、私は田中君の下でだらしなく喘いでいた。


貪欲に相手を求めて、愛をあげる。


私には、これしかできないから。


なのに

一番愛して欲しい人には、伝えれない。



ホント、自分が嫌になる。

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愛し愛され愛され愛し らうぶ @nenegyo

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