welcome

「じゃ、晴日ばいばぁーい」

大袈裟に手を振りながらやけに上機嫌なカノジョはそう言った。

「ああ、またな」

カノジョが家の角を曲がり見えなくなると同時に大きなため息を吐く。


───彼氏面ってきついよな…











「どこでも良いよ~座って」

「お、お邪魔します…」

ぎこちなくカーペットの上に座った田中君の前にさっき注いだお茶を置く。

「今日は楽しかったね~」

ニコニコと笑顔を貼り付けて話しているけど田中君の耳には入ってないみたい。

「あ、あのさ…親は大丈夫なの?」

さっきから辺りを見渡していた田中君は上目遣いでそう言った。

──来た。

私は少し湿った声で、田中君に言葉を放つ。

「今日は…両親どっちも仕事で夜遅くまで帰って来ないんだ…」

田中君の顔が一気に固まる。


夜遅くまで帰って来ないってことは



そういうことだよね?



ね、田中君


田中君に背を向けて舌なめずりをする私の顔は多分、童話に出てくる魔女みたいに歪んでるんだろう。

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