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メジョとの戦いを、どうにかイメージしてみることにする。プリシスがこれをゲーム扱いするのなら、とことんゲームだと思ってみるしかない。
一人称ゲームだってあるんだし……。酔うから少ししかやったことないけど。
「メジョを生き物だと思うから怖いんだ。やつはただのフィクション、フィクションのキャラクター……」
『ねぇリュート、メジョとか言ってるけどデゴイルっていうのよ、あれ』
「デゴイルって言いにくいからメジョでいい」
『あそ。どうでもいいんだけど。リュート、ヒロイン救出がんばっていこう!』
「救出って……。こっちが巻き込んでるんじゃないのか?」
『何わけわかんないこと言ってんの。ほら、行っておいでってば』
「はぁ……」
僕が拳銃を握りしめる。強いことを思い出す、どういうことだそれ……。確かに一般のゲームだと負け知らずみたいなものだったけど……。
『気合入れていきなさいよー!』
プリシスの声に我に返る。そうだ、リミット。僕だけじゃない、彼女のリミットはあとどれくらいなんだろう。ふと目の前にそびえ立つオンボロビルを見上げる。僕を見下ろす彼女が見えた。
「大丈夫ですか!? 助けますから!」
僕はありったけの声で叫んだ。申し訳ないよ、こんなゲームに巻き込んでるなんて。
『お! いいぞぉう、その調子!』
プリシスの声に苦笑しつつ、走り出そうとした瞬間に、あの感覚が僕を襲う。
エンカウント。
三度目となれば三匹のメジョというのも見慣れた気がする。それに、リミットは僕だけじゃないんだ。
「どけよ!!」
僕は拳銃を構える。これ、本当に水鉄砲じゃないっていうのか?
じゃあなんだんだよ、こいつの威力って……!
メジョを捉えているはずの銃口はやっぱり震えてしまう。
“メジョー!!”
メジョが翼を広げて僕へ飛んでくる。
わ、わ、マジで来ないで!!
だけど――!
僕はあまりにも早いスピードで迫ってくるメジョに引き金を引く。今回はきちんと銃口から発射されたものを見ることができた。
短く、何か光るものがメジョに向かって走る。
“メジョ……!”
メジョの頬のあたりから、緑に光るものが流れている。
「うわ……あれって、血?」
僕がメジョの血のようなものを見て、やっぱり生き物にしか見えなくなって怯んでしまう。僕が怯んでるのがおかしいのか、魔物は僕に向かうのではなく、オンボロビルへとぺたり、ぺたりと足音を不気味に立てて近づいてく。柱にたどり着くと、腕に力が込められたかと思うとパンチを繰り出す。
ドゴォオオオン――!!
メジョのあまりの破壊力に腰が抜けてしまった。オンボロビルの一部が砕け、メジョは1メートル程ある鉄骨がむき出しになった、コンクリートの塊を僕へとぶん投げてきた。
「う、わ!!?」
『だいじょうぶ! 構えて、リュート! できるから!』
僕は、え、という声を出すのと共に急いで立ち上がり、両手を広げて構える動作をした。
あれはデジタルだぁああ――!!
だけどやっぱりどこか怖くて、目を瞑ってしまった。
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