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「こ、こういう時はパンチか? ふっ!!」
じっと立ち尽くしていた魔物に、素早く駆けて拳を繰り出すことにしてみた。すると当たり前といえば当たり前だろうけど、魔物が瞬時に翼を広げたその勢いと大きさに僕は完璧に怯んでしまった。
“メジョー!!”
「っぐうぁあああああ!!!!?」
一匹目の魔物に触れるどころか翼で叩かれただけで、その風圧にものの見事にふっとばされてしまった。体中に走る衝撃。痛すぎるよ!!
それに……なんて情けないんだよ……!
視界が、さっきまでとは違い赤く点滅しだす。ゲームで言えば残りHPが少ない意味があるけど。大分ダメージ受けたのか……。
「てんで歯が立たないじゃないか! しかも目の前チカチカするし」
目を閉じても開けても視界全体に起きている赤い点滅からは逃げられない。
『どんまいリュート。チカチカは、残りHPがほとんどないからだね』
「プリシス、ちなみに残りHPが0になったらどうなるんだ?」
『この勝負から逃げるを選択しなければ、やり直しね。リプレイぐらい用意してるわ』
「よかった……。こういうのって、HP0になったらもう虫になる展開かとてっきり」
『……ねぇ。それよりも真っ向勝負をするにはレベル足りなさすぎだってば。まだ武器使ってないんだし、ちゃんと使ってみなよ』
「あっ! そうだ、武器」
僕は破れていたスーツが光とともに自然と回復する部分を見て驚きつつ、本当にひょっとするんじゃないかという気持ちになって、腰についていた拳銃を手にとる。
手のひらに収まる、見た目からしてとても情けないこの拳銃。唯一いい点は僕の顔がへにゃりとはっきり銃に映るぐらい、銀色に輝いているところだった。
「試して……みるか」
『そうだよ、その調子! あと2分ね!』
「え!? やっぱムリゲーじゃん!」
『逃げる? 逃げたら虫だから』
「う……!」
やり直しできるって言われても、つまりは一度死ぬってことでしょ!?
それはそれで怖いんだよ――!
『どんまいだね。ほら、始めるよっ』
「えっ!?」
僕の視界が瞬時に元の現場へと切り替わったのと同時に、足元でバリっという音がし、ガラスが飛び散った後のあのオンボロビルの前に転送されていた。
繁華街は魔物に驚いたのだろう、背には人々の叫びが。だけど今は魔物が見当たらない。視界は赤く点滅していて、鼓動も高まって更に不安になる。
「そうだ、銃――!」
魔物が出る前にと、拳銃に触れた時だった。僕の身体が先程感じたエンカウント前の硬直が訪れ、そして身体の自由になったと思えばさっきの黒い人間コウモリのような奴等が立っていたんだ。
“メジョ?”
メジョ。またお前かとあのメジョに言われた気がして、僕はくそと思いつつも拳銃を即座に構えた。だけど、手が震えてしまって面白いぐらいに震えてしまっていた。
「くっそ……!」
メジョが翼を広げる。そして、メジョの近くにいたもう一匹のメジョも翼を広げた。ヤバイ。こっち来ないでくれよ!
メジョがこちらに向かって地を蹴った。僕は思いきり拳銃の引き金を引いた。
弾が勢い良く弾かれた、気がした――。
「流都――!!」
けれど、突然の暗転。
僕の意識が消え行く時に微かに聴こえた女性の声。視界にやっと光が訪れたと思えば、そこは戦場ではなく、僕の見慣れた部屋だった。
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