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『ま、とりあえずこれがリュートの残りの命ね』

「え、ちょっ……!?」


 僕の目の前には電池のマークと、その中身がもうスカスカといってもいい状態ものが映し出されていた。


『これが現実だとしたら、もってあと15分ね』

「え、え!?」

『リュートが送るはずだった今日の予定は、リュートが目を覚ましてぼけっとしてトイレで立ってる時に意識が……』

「うわ、何だか妙に生々しいな」

『当たり前じゃん。命が果てる時はそんなものだよ』

「はあ……でもそうか、僕、死んじゃうのか……」

『ばか。この短ぁい線をこよなく伸ばすために、“この世に無気力症候群”真っ只中のリュートの前に来たんだよ?』

「そんな無気力って」


 はっきり言われて顔をしかめてしまった。僕はそんなに人生に対してやる気を失っていたのか。確かに日々思いすぎてそれが当たり前なってて特に気になってなかったのが正しいかな。


『ちなみに無気力のまま命を放り投げることを選択すると、永遠にこの部屋で過ごしてもらうことになってるの』

「はあ!?」

『仕方ないでしょー? そういうルールだもん。それが嫌なら、今からいうオシゴトをこなして? そしたら、ちゃんと素敵な未来が待ってるから』

「その、言ってる意味がよくわからないんだけど、キミがいうお仕事っていうのができたら生きられるってこと?」

『そうよ、分かってるじゃん。このオシゴトは至って簡単よ。まずは私が設定した場に置かれたヒロインを必ず助けること』

「はぁ……。助け、る」


 助ける、という言葉に少し眉がピクリとなる。僕が今、一番助けて欲しいのに。


『あと一つ。この世界に紛れた魔物を一匹見つけて倒すだけ。それから私の名前はプリシス」


 美少女の画面の前に“プリシス”というテロップが現れる。


「はぁ……。プリシスさん。って、はあ!? 魔物!?」


 魔物なんて、まるでゲームの世界じゃないか!

 ゲームは好きだけど手元で倒せるあんなのとは多分、僕のこの嫌な予感からするとこれは多分違うはず。大変そうだし、何よりも面倒くさいと思った。そんな仕事だったら、あと数十分の命だし、もうあの世に旅立ってもいいなとか。


「無理です」

『は?』


 美少女の顔が歪んでいる。やばい。でも怖いのはいやなんだよ……!


「怖いのは嫌です。あと痛いのも」

『こんの……!』

「そんな目に逢うのなら、僕はいっそ……」

『いーまーすーぐ! その口が死んでもいいとか言ったら、すぐこの部屋に永遠を生きてもらうから。あと虫に変えるし。すんごくきっもちのわるい、や、つ、に! 虫だって何に命を奪われるかもわからない状態で秒単位で一生懸命生きてるんだよ! いい!? わかった!?」


 この部屋にも目に見えない虫なんていくらでもいるだろうしねと、そう言われた僕は恐ろしくて震え上がった。


「虫はご勘弁ください……!」

『はい、じゃあ言われた通りに助けてね? あと、オシゴトの簡単ルール載せとくから』


 そして文字だけの画面に切り替わって、仕方なくルールを読む。


 ・ルールその1、ヒーローを務めるにあたって現場から逃げ出したら部屋の中で生きる。

 ・ルールその2、魔物を一匹も倒せなかったら部屋の中で生きる。

 ・ルールその3、ヒロインの命を助けられなかったら部屋の中で生きる。


『あ、そうそう。部屋の中で生きるって書いてるけど、その部分“虫になって生きる”にしたから』

「ええええ!?」

『じゃ、がんばって!』


 僕の視界は、瞬時に部屋から暗転して恐怖しか感じられなかった。

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