第22話、エピローグ
仕事で立ち寄った渋谷・・・
忠犬ハチ公前で、私は『 なつき 』と出会った。
声を掛けて来たのは、彼女。 『 客取り 』だ。 いわゆる『 お誘い 』である。
10分ほど、話をした。
「 20歳になったら、考え直そうと思って・・ 」
物語に出て来たセリフは、彼女のもの。 一語一句、違わない。
この物語を制作してから3年後、当時、探偵を生業としていた私は『 業界 』の
伝を頼り、『 なつき 』の消息を調べてみた事がある。
・・そう、ハタチになっているはずだからだ。
結果、新宿界隈での目撃情報を数件、入手。
まだ『 帰って 』はいなかった・・・
そうそう上手く、物語通りには、いかないものだ。
世の中には、人に知られない世界が存在する。
そこで暮らし、想像もつかないような底辺の経験をしながら、尚且つ、
たくましく生きている人たちがいる。
その人たちの人生を、何人たりとも、愚弄す事は出来ない。
目的も無く、意志も持たずに明日を彷徨う者は、見よ。
自負ある者たちの気高さを。 たくましさを・・!
そして思い知るのだ。
悩ましき、己の世界の狭さを・・!
悶々とする、忸怩たる想いは、何と小さき事か・・・
成し得る明日は、自分が思うほど簡単にはやって来ない。
怠惰たる偶像の中に過ごすか、可能性在る未知を探るか、2つに1つなのである。
流されて行くのではなく、流れて行く・・・
どうしようもない岐路に遭遇した時は、そんな観点に立ってみると良い。
自身が見えてさえいれば、ほとんどの場合、大丈夫なのだから・・・
『 生きる 』という大変な事を、難なくやってのけている今の自分に、
もっと自信を持て!
死ぬ事ほど、簡単な事は無い。
そんな簡単な事に美学を持って、何の得とするのだ。
不変なる意思として、心に刻んでみよう。
明日こそが、未来である。
明日を迎える事が出来た者にだけ、夢と可能性は存在するのだ。
それら、夢と可能性は、未来にしか存在しない事実を、己の心で認識せよ。
明日をも知れない状況下においては、人は、意外に強くなれる。
・・一際、未来への希望に執し、生きる事に貪欲になるからだ。
苦労の人生を、あえて進め、とは言わない。
だが、長い人生の一部・・ わずかな時期でも良いから、生きる事に対し、
餓鬼になれる経験が、『 人 』には必要である。
『 人 』こそが、1つの存在であり、『 隻影 』なのである。
夏川 俊
隻影 夏川 俊 @natukawa
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