謎の美少女編 4.顧問は誰だよ
人間観察部の活動が始まってからもう1週間が過ぎようとしていた。
最初の活動は部室の掃除で、この1週間は特に何もしないで、俺は部室である資料室で本を読む毎日だった。
他の奴らはと言うと、一華と小鳥は俺と同じように本を読み、奏では相変わらず絵だけを描いている。
部長はと言うと、いつも部室に置いてあるパソコンとにらめっこしていた。
俺は本を閉じた。
「なあ、この部活、何やるんだよ」
俺が誰にでもなくそう聞くと、皆こちらを向いて頭にハテナマークをつける。
「部長、何か活動しましょう、いくら動くのが嫌な俺だってここまで何もしないと、退屈で退部しちゃいそうです」
「それは困るな、じゃあ、私のジュース買ってきて」
「じゃあついでに私のも」
「私も」
「私のもたのみまーす!」
こいつら、炭酸系頼んだら思いっきりシェイクしてやる。
「じゃあ、私はコーラで」
部長、死刑確定。
「私も同じものをお願いします」
同じく一華も死刑。
「私も同じで」
小鳥も。
「私は、オレンジジュース!」
こいつはシェイクの刑を免れたな。
「んじゃ、1人ずつ金くれー」
俺が金を取ろうと、みんなに呼びかけると。
「はあ?奢りでしょ?」
この金髪チビは!これじゃ中学の時と変わんねえじゃ......、おっと、黒歴史を暴露するところだった。友達に奢ってなんとか友達という関係を保っていたあの頃の俺が可哀想すぎる。あの野郎、次あったら覚えてろよ。
「まあいい、今回は俺の奢りということで、次からは他の誰か奢れよ」
誰1人として返事をするものはいなかった。
おいおい、力の差を思い知らせてやろうか。
俺は太鼓の達人で負けたことないぞ。
中学時代友達になぜか遊びに誘われなかったため、休日はいつも近くのゲーセンの太鼓の達人で腕を磨いていた俺だからな。千○桜の裏鬼とか画面見ないで打てるぞ。
俺は取り敢えず財布を持ち、A棟1階の食堂の前にしかない自販機へと向かった。
コーラコーラと。
コーラ三本に、オレンジジュース一本と、お茶を一本買う。
すると、俺の横で、小学生くらいの少女が自販機を眺めていた。
なんでこんなところに小学生が?
「お前、迷子か?」
「あう?」
少女に話しかけると、変な返事をして、一歩後ろへと下がった。
「あの、私、えっと、えっと、私......」
少女は恥ずかしそうに頬を赤く染め、下を向いて黙り込んでしまった。
「ジュース飲みたいのか?」
俺はしゃがんで、そう聞く。
すると下を向いていた少女が顔を上げ、嬉しそうに目を輝かせた。
「飲みたいっ!飲みたいです!」
いきなり元気になった少女に戸惑いながらも、オレンジジュースを一本買ってやった。
*****
「ぷはぁ!美味しい!」
自販機の前にあるベンチに俺は座っていた。
隣には少女が座り、なんとも言えない風景となっていた。
なんだか、俺がジュースで子供を釣ってるみたいに思われないかな。
気まずさに耐えかねた俺は、少女に話しかける。
「なあ、改めて聞くが迷子なのか?」
「いえ、違いますよ」
「じゃあ、誰かの妹とか?」
「違いますー」
「じゃあ、なんだ?」
「この学校の校長です」
沈黙と静寂が俺たちを包んだ。
しかしその空間はおれと、この少女だけのもの、普通に周りは騒がしいし、いろいろな音が聞こえる。
「いや、お前、冗談だろ?」
少女は首を傾げ、俺のことを見ている。
こ、こいつ、嘘を言っているようには見えない、しかし、こんなに若いのに校長?それ本当だったらうちの学校どうなってんの?取り敢えず、労働基準法犯してんじゃん。
「そ、そうかー、じゃあ教員免許見せてくれないかな?」
「はい」
手渡された一枚のカードを見ると、そこには、『校長、並木ミク』と書かれていた。
マジもんだ、これ。
「じゃ、じゃあ俺そろそろ行きます......」
何か面倒ごとが起きそうな予感がした俺は、その場から、というかこのミクってやつから離れることにした。
*****
ミク、ミク先生と別れてから俺はまっすぐ部室へと向かっていた。
部室の前について、ドアを勢いよく開けはなつ。
「大変だ!」
「きゃあああああああ!!」
部室では、なぜか皆コスプレ衣装に着替えている最中だった。
と思っていたら、真っ直ぐと何か物が......
ガン!
顔面に何かを食らった俺はそこで意識をなくしたのだった。
どのくらいだったのだろう。
「知らない天井だ」
初めて見る天井を見ると、かこのフレーズしか思い浮かばないのは何故だろう。
俺が寝ていたのは保健室のベットだった。
この学校に入学して初めて保健室に来た。
「いつつつつ」
上半身を起こして、壁に掛けてある時計を見る。
「もう6時じゃん......」
保健室の中を見回すと、俺の横で、椅子に座りながら寝ている、来夢の姿があった。
静かにしていれば可愛いのに。
そう思って見ていると、来夢が目を覚ました。
目をこすりながら俺の方を向く。
「おはよ」
「おはよじゃねぇ、俺を気絶させたのはお前か」
「しょ、しょうがないじゃない!セロハンテープしか投げるものなかったんだし」
は?セロハンテープ?学校のって確かコンクリでできてるよな?間違ったら俺死んでんじゃん。
「それより......みた?」
「なんだって?」
「私の裸見たのか聞いてんの!」
「あー、いきなりだったから覚えてない、多分見てないと思うぞ」
「はー、よかったー」
すみません、実はバリバリ見てました。とか言えない......
しかもピンクのレースの下着だったなんて言えない。
それと、意外と胸あるんだなとか言えない!
よし、墓場まで持って行こう。
そう決心して、俺はベットから立ち上がる。
「もう遅いし、俺が送ってくよ、歩きだろ?」
「う、うん、ありがと」
夕日のせいか、来夢の頬が赤らんでいるように見えた。
多分、夕日のせいだろう。
「え?」
「だから、私は2年生だよ?」
俺たちは学校からの帰り道を歩いていた。
「ええっ!?先輩だったんですか!?」
「そうだよ!」
「せ、先輩......」
「なんか文句あるのかよー!」
沈みそうな夕日の中、俺は久しぶりに楽しく他人と会話した。
こうやって話すのもいいもんだな。
「そう言えば、顧問って誰なんだ?」
「ミク先生だよ?」
「は!?」
「あれ?ミク先生知ってるの?」
「あ、ああ、今日あった」
「そうなんだ」
来夢は微笑む。
その横顔を見て、俺は少しドキッとした。
なんだよ、こんなに可愛く笑えんじゃねえかよ。
いつものツンツンはどこ行ったんだよ。
俺は、空を見上げて呟く。
「友達って、こんなのかな」
ノーフレライフ〜俺は友達がいない〜 皐月☆良いことある。 @Ryuta
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