第42話 出立と少年の願い――②
オーガに憧れる少年から弟子に、と熱願される。
リアンは困り顔をニイオの父親であるカルデオへと見せたが、その周りと同じく微笑ましい光景を眺める態度以上のものは望めなかった。
それを経て、リアンはニイオの前で屈む。
「オーガは誰も弟子を取らない」
相手の頭を撫でながらリアンは伝えた。
案の定だろう。向き合う面では、ニイオが世界の終わりでも告げられたかの如くしょげている。
「どうしても、ダメ?」
振り絞り食い下がる声に、リアンは首を横に振る。
「ニイオがオーガを目指すのなら、俺から学ぶことはないって話さ。なぜならニイオはもう、オーガの教えを知っているだろ」
「僕……教えは知っているけど」
「教えがニイオをオーガに近づけてくれる」
諭すように言えば、リアンがよっと屈む腰を上げた。
その立ち姿に合わせ、ニイオの眼差しが上向く。
「もっといっぱいタンレンしたら、僕もリアンお兄ちゃんみたいになれる?」
「ニイオなら、俺なんかすぐ追い越すだろうさ」
そう答えた後、リアンは傍らのシャルテの動きに合わせ行動するようだ。
飛行船へ乗り込むシャルテの姿。出発の訪れに、リアンは周りの者達を見回してからついて行く。
ばたりと降ろされた搭乗口のスロープ。
そこを軽い足取りが、カンカンと音を鳴らし上る。その傾斜の途中でリアンがはたと振り返った。
「オーガは強い。けどそこには心の強さも一緒じゃないといけない。だから心の鍛錬も頑張らなくちゃいけない」
思い出したかのような言い草はニイオへ向けて。
「心のタンレン?」
「ニイオが周りの人達を笑顔にするんだ。それが心の鍛錬だ」
見本を示すように、リアンは白い歯を見せた。
頑張ると元気な返事があれば、そそくさ機内へと乗り込む。
頃合いを見計らったように搭乗口が閉じてしばらく。フラットな大地に噴射するような風が起きる。
短い風のざわめきの後には、徐々に浮かび上がる飛空船。
キシキシと重さを感じる音も終わり、発着場から切り離される。
浮遊する大きな楕円形の物体。
それを見上げ見送る者達。
雲へと届かん高みまで上昇すれば、飛行船はエルヴァニアに向け緩やかに飛び立つのだった。
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