第21話 打ち上げ
青い空、青い海、白い砂浜、打ち寄せる波の音、ビーチパラソル、水着のJKたち、それを一眼レフで堂々と撮る男子高校生。お察しの通り、俺たちB組with加藤は海に来ている。なぜ海なのかと聞かれれば俺にもよくわからん。鈴川が「体育祭の打ち上げで海に行こうよ」と提案し、三浦やその他諸々が賛成して今に至る。いや、打ち上げといえば普通ファミレスだとかカラオケだとかだろう。海で打ち上げなんぞ聞いたことがない。
「いいねえ~!!みんなこっち向いて!かわいいよお~っ!」
水着の同級生にカメラを向け続ける加藤は恐らく真正の変態だ。というかなんでついてきたのか俺にも分からない。クラスで海に行くことを個人LINEで伝えただけなのに、いつのまにか加藤も加わる流れになっていた。しかも、加藤が来ていることに対してクラスのやつらは何も気にすることなく、思い思いに遊んでいる。お互いに色々とおかしい。
ちなみに俺はというと、女子共と一緒に遊ぶわけにもいかず、はたまた加藤と行動にするなんてわけにもいかず、ビーチパラソルの日陰でさっき自販機で買った炭酸飲料を飲みながら、砂浜にいるあいつらを遠巻きに眺めていた。暇だからクラスメートの人間観察でもするか。
それにしても、こうして見ると女の水着は色々あるんだなあ。坂下は坂下らしく競泳水着を着て、一人で少し沖に出て泳いでいる。宇佐美はこれまた宇佐美らしく、薄いピンクのワンピースタイプの水着を着て、鈴川と水の掛け合いっこをしてあそんでいる。そのロリロリとした体系にピッタリとフィットして、完全にロリコンを煽っている。一方の鈴川は正統派のオレンジ色の布地が多めのビキニで、いかにも普通のJKって感じだ。西園寺とビーチバレーをしている三浦は、中学生がよく着ている、洋服なのか水着なのか分からない水着を着ている。一見、迷彩柄のタンクトップに、ベージュのホットパンツを穿いているように見える。そして、バレーで三浦を打ち負かしている西園寺は、シンプルな紫のビキニを纏っている。シンプルなはずなのに、ナイスバディの西園寺が着ると途端に優美さが溢れてくる。というか、お前体育祭来てなかっただろ、おい。そして、そいつらから離れて、俺の目の前で砂のお城作りに熱中している近藤は、南国の現地人が着ているような、腰に布を巻いたような水着を着ている。胸元も布を巻いただけのようなデザインだ。もちろん、そう見えるだけで中身は普通のビキニである。さて、そして仲間に加われないやつがもう一人。楠木だ。楠木が身に付けているのは紺のスク水で、小さい胸にはお母さんの文字だろうか、でかでかと「楠木」と書かれている。
「暇だわ~」
と言ってスマホを弄くっている。しかし、それにも飽きたらしく、スマホを俺の方に投げて寄越すと、砂遊びをしている近藤に背後から近付き、そのたわわな胸を鷲掴みにした。
「おっぱい星人め、成敗してやる」
「わ~いおっぱいおっぱい~」
近藤もそんなことを言いながら楠木にされるがままにされている。楠木は今度は沖から戻ってきたばかりの坂下に近付き、前から胸を揉みしだいた。
「ちょっ!?突然何するの!?」
坂下は赤くなっておろおろしているが、楠木は揉む手を止めない。そして、今度はバレーをしている西園寺の元へ駆け寄った。
「あら……イケない子ですわね……」
なんなんだその夜のお仕事みたいな言い方は。いくら揉まれてもまったく顔色を変えない辺り、流石である。
「こうなりゃついでに揉ませてもらおう!」
そう決め台詞のように言ったかと思うと、同じくらいの胸の大きさの鈴川の胸を後ろから揉み始めた。
「ひゃっ!くすぐったいよ~」
鈴川は恥ずかしいというより、くすぐったくて笑っている感じだ。そして、楠木はとうとう、自分より胸の小さい三浦の元へも駆け寄った。その私服のようなダボダボした水着の隙間から中に手を突っ込んで、直にその小さな膨らみに触れる。
「ちょ、ちょっと!直接は……」
三浦は顔を真っ赤にして顔を手で覆っている。そして楠木は最後の一人、宇佐美にも手を出した。肌にフィットした水着の、ツンと尖ってる部分を人差し指と親指でつまんだ。
「や、やめてくださいぃ……ひゃうんぅ」
宇佐美は時々ビクッと身体を震わせながら吐息を漏らす。一通り胸を揉みしだいて満足している楠木の元へ、今度は全員が集まってきた。
「人の胸を好き勝手しておいて、自分も揉まれる準備は出来てるんでしょうね?」
主に坂下や三浦から殺気が放たれる。
「え、あ、えーと」
その迫力に楠木も冷や汗たらたらである。そして、全員が一斉に楠木に飛び付いた。お返しで胸を揉みしだく者もいれば、お腹や足の裏をくすぐる者もいる。
「ひゃあぁっ!!ふひひっごめんなさい!もうしませんからっ!くすぐったい!……ちょっと!下はダメ……あっ……」
「いいよ!いいよ!いい写真になりそうだよ!」
女子の胸の揉み合いを撮影している加藤は通報されても仕方あるまい。さて、クラスメートの戯れを見ているのも飽きた俺は、ごろんと横になって目を瞑った。そういやあこれは体育祭の打ち上げだったな。体育祭は……まあ上出来だったんじゃないか?こうしてクラス(俺を除く)の親睦が深められたわけだし。また明日からも、変わらずあいつらの着替えを見せられるんだろう。そんな柄にもないことを考えていたら、いつの間にか眠っていた。しかし、その時の俺は知る由もなかった。やつらが俺のことをすっかり忘れて帰りやがって、夜に警官に起こされることになろうとは。
♂:♀=1:7 前花しずく @shizuku_maehana
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