第19話 午前の部
そんなこんなで当日になっちまったわけだが、誰かしらが日頃悪い行いをしていたようで、まあ振るわ振るわの土砂降りであった。雨天時は通常授業とのお達しだったので登校したのはいいんだが、雨の降りしきる中、校庭にジャージ姿の生徒達が集まっているのには度肝を抜かれた。こんな雨の中で外にいるなんて、酷い部活もあるもんだなあ~と思って教室に入れば、黒板に「体育祭やります!外に集合」と書いてあるのが目に入ってきた。おいおい、正気の沙汰じゃないぞ。こう見えて濡れるのが好きではない俺は、ジャージに着替えた後もしばらくまごまごして、結局折りたたみ傘を片手に校庭に向かった。誰もが雨に打たれてる中、一人傘を持っているのは浮くだろうと思ったが、びしょ濡れになるよりはいい。
さて、我が校の体育祭を少し説明しておくと、1~3組と4~6組の2チームに分かれて戦う。まあ、大体のクラスが団結力の都合上、クラスごとに種目を決めている。最初の種目は長縄だ。楠木と宇佐美が出陣する。あれだけ練習に付き合ってやったのだ、少しくらい結果を出してもらわなきゃ困る。ちなみに、俺含めたギャラリーは先生が急遽用意したテントの下で観戦中だ。
縄を回してるのは体育祭実行委員で、跳んでいるのは各クラスから二名ずつ。誰もいない状態で回して、一人ずつ入っていったところから数え始め、失敗するまでの回数を数える一回勝負だ。案の定、宇佐美は一番後ろに並んでいる。合図で一人、また一人と縄に入り、宇佐美も入るだけは入った。しかし、緊張していたのか、地面が雨でぬかるんでいたからか、三回目で宇佐美が転び、その時点で我々のチームの負けが決定した。無念。
「おー!!見ろよ裕樹!女子たちのブラが透けて見えるぞおお!!」
「黙ってろ変態」
加藤よ、体育祭くらい普通に楽しみたまへ。
「ごめんなさいぃぃ」
「もう終わったことはいいからさ、応援しようぜ」
さて、宇佐美が泣いているのを楠木が慰める中、近藤の出場する綱引きが始まった。綱は地面スタートで、綱に触れなければいくら手を近づけてもいい。両者とも見合って……合図と共に一斉に引っ張りだした。近藤も透けたブラを大きく揺らしながら身体を後ろに反る。しばらく膠着状態が続いたが、相手チームの一人が足を滑らせて転倒、そのまま引きずる形で我がチームが勝利となった。これで得点は五分五分だ。
「よくやった、近藤」
「やだな~、みんなが強かったんだよ~」
近藤が嬉しそうにハイタッチを要求してくるので、俺もそれに応えた。その後は二年の競技が行われ、午前の部はこれで終いとなった。応援してただけでも服がかなり濡れたので、絞ってから飯を食おう。
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