第17話 ノーパソ

 さて、今の授業は何かというと、皆大好き古典だ。何故古典が好きなのかというと、いや古典が好きというのは語弊がある。古典の授業では大声で喋ろうが、スマホをいじろうが、何をしても注意をされないため、我がクラスでは古典の授業は自由時間のようになっていた。そんなこんなで、お喋りし放題なのだが、俺の耳にこんな会話が飛び込んできた。

「なんか、たまにパンツ穿き忘れることあるよね~」

 その声は楠木のものだった。おいおい、そんなラブコメアニメにあるようなことが現実であってたまるか。

「あるある!私もこの間スパッツの下にパンツ穿いてなくて焦ったよ」

 賛同したのは意外にも鈴川だった。おい鈴川……。

「うち、家の中だとパンツ穿いてないから、起きてそのまま来ると忘れちゃうんだよね~」

 楠木は当たり前のように言っているが、パンツを穿かずに生活するってどういうことなのだろうか。ズボンはちゃんと穿いているんだろうな……?

「体育の日には特に気をつけるんだけどね~」

 確かに体育の日にノーパンで来られたら、本人はもちろん俺が死ぬことになるぞ。心から気をつけて頂きたい。

「あ~、私も私も~、家の中ではパンツ穿いてないよ~」

「みなみちゃんもそうなの?意外だね」

 おいおい、近藤までノーパン・イン・ハウス宣言かよ。そのムチムチボディで下着付けてなかったらどうなるんだ……いや、考えたら負けだ、俺よ。

「パンツもそうだけど、高校入ってからブラ忘れたことは何回かあったな~」

 楠木がまたまた大胆カミングアウト。まあ、確かにお前は胸がそんなにないから忘れても差し支えないのかもしれんが。

「あ、でもでもキャミソールは着てきてるから大丈夫」

 知らない単語が出てきたぞ。キャミソールとはつまり、ブラジャーの代わりになるような衣類なんだろうな、きっと。

「私は流石にブラ忘れることはないけど~」

 そりゃ近藤が忘れたら体育でなくとも大変なことになる。

「そういえば私今日ブラつけわす……」

「これで授業を終わります。きょーつけー、れー」

 鈴川の発言の途中で先生が授業を終わらせた。……おい、今何か重大なことを言おうとしなかったか?おい!その日はしばらく心は穏やかではなかったぞ。

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