第9話 恥ずかしがり屋系

 放課後、先生に用事があって少し遅くなってしまった。教室へ荷物を取りに行くと、誰もいないと思っていたのだが、一人まだ残っていた。どうやら黒板を消しているようだ。まあ、それを横目に支度をして帰ろうと思ったのだが、どうもそいつは黒板の上の方に手が届かないらしい。つま先立ちで精一杯手を伸ばしているが、届く気配がない。

 ……こんな少女マンガみたいな状況が本当にあるのか、と驚きつつも、放っておくわけにはいかないので、とりあえず手伝おうと近付いた。

「なあ」

「ひゃっ!?ひゃいっ!」

 声を掛けるや否や、小さい声で悲鳴を上げた。そしてその顔はみるみる赤く染まっていく。きっと恥ずかしがりなのだろうが、それでも着替えの時は堂々と着替えてるんだよなあ。基準が分からん。

 肩よりちょっと下まである髪の毛を左右で

三つ編みにし、前髪は一部分を髪留めで留めている。

「えっと、あの……な、なんでしょうか」

 怯えた子犬のような目で俺の顔を見上げてくる。どうやら会話が苦手な部類のようだ。

「手伝ってやるよ」

 そうとだけ答えて、俺はもう一つの黒板消しで高いところを消してやった。そいつはしばらくぽかんとして見ていたが、俺が消し終わるとふと我に返ったようにあたふたしだした。

「あの、あのあのっ、ありがとう……」

 次第に尻すぼみになっていって、「ございました」が聞き取れなかった。ちなみにその間ずっと耳まで真っ赤だ。三浦と同じロリ属性とはいえ、やはり性格の違いは大きいな。……いや、背は低いが胸は三浦よりあるかもしれない。あー、もうだめだ、クラスメイトをそういう風にしか見れない俺が嫌だ。

「別にいいってことよ」

 変な台詞だけ捨てて教室を出てきてしまったが、その直後にあいつの名前を思い出した。そうだ、宇佐美香奈だ。やっぱり女としては宇佐美みたいなタイプが女らしくていいよなあ。……まあ、着替えるときもさっきと同じくらい恥ずかしがってほしいのだが。

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