第8話 お嬢様系(後半)
西園寺とは当然、トーナメントの決勝で当たることになった。俺らの試合をするコートが観戦者に囲まれる。
「お手柔らかにお願いしますわ」
うわ、お嬢様ってまじでこういう口調なのかよ。変なところに興味持ちつつ、回転の効いたサーブを打ち込む。学校のものとはいえ、まあまあ回転はかかっているはずだが、相手も涼しい顔をして返してくる。流石経験者と言ったところか。しかし、女子に負けては男が廃る。経験者ではない、西園寺のペアの方へ打ち返す。西園寺もカバーしようとラケットを引くが、ボールはペアの体に当たって跳ね返った。少々汚い手だが、この際仕方がない。
「へえ……なかなかやるわね」
西園寺は点を取られたのに余裕の表情で舌なめずりしている。すると、ジャージのポケットからゴムを取り出し、その長い髪の毛を後ろで一本に束ね、ポニーテールにした。どうやら本気モードらしい。髪の毛とブカブカのジャージのせいで分かりづらかったが、委員長よりも胸がでかいかもしれない。
しかし、俺も伊達にテニス部部長を務めたわけじゃない。渾身のサービスを相手コートに打ち込んだ。西園寺はしなやかな動きで軽々と球に追いつき、甲高い音を響かせて球を打ち返した。それを俺がスマッシュ気味に打ち返す。
しばらくラリーが続いたが、俺の視線は球ではなく西園寺の胸にあった。一球一球打つ度に上下に振れる豊かな胸。女子の着替えを見てもなんとも思わなかった俺だが、ブカブカなジャージの下で乳が揺れるのがこんなにも妖艶だなんて思わなかった。こんなの反則だ!
「フフフッ……男ってた・ん・じゅ・ん」
負けたんじゃない……負けてやったんだ……そう思いたいが、負けた事実は変わらず、完全にテンションが下がったまんまで、この日の体育の授業は終わりを迎えた。
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