第7話 お嬢様系(前半)
一時間目の体育ほどだるいものはないな。いや、運動自体は嫌いじゃないが、やっぱり朝一から動き回るのは体に応える。
「よぉ裕樹。今日も今日とて死んだ魚のような目をしているな!」
俺のことを下の名前で呼んできたこのアホ丸出しのツンツン頭は1-Aの加藤孝太郎。前にも言った学年に3人いる男子のうちの一人だ。体育は3クラスずつ合同で行うので、体育では入学当初からずっとこいつとペアを組んでいる。ちなみに、もう一人の男子は体育の時間すらも会わない。
「死んだ魚で悪かったな」
「こんなに女の子に囲まれてるのに喜ばないなんて、本当お前神経どうかしてるよな」
会話を聞いて分かる通り、こいつは「ハーレムだぜ~!やっほーい!」という側の人間だ。……別に分からないわけでもないのだが、少しは下心を隠せというものだ。
さて、一年最初の体育はテニスをやっている。何を隠そう中学の頃テニス部部長をやっていた俺はダブルスのペアである孝太郎の失態をもカバーし、常にトーナメントのトップに君臨している。まあ、相手が全員女子であることも幸いしているのだが。
と、いうことで、この日も俺の独壇場になるかと思っていたのだが、ちょっとしたイレギュラーが発生した。隣のコートで普段は聞かないような、球を打つ鋭い音がする。見れば、ウェーブした長い髪の毛の女が相手ペアをボコボコにしていた。
「ウフフ……そんなことでは私に勝てませんわよ?」
その顔はどうやら見覚えがある。確かうちのクラスの奴だ。登校する日より休みの日が多く、登校するにしても授業中ふらっと来てふらっと帰る、自由きままな奴らしい。話によると相当なお嬢様なのだとか。名前はいかにもお嬢様というような……そう、西園寺鏡子だ。
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