第2話 幼なじみ系
そういうわけで、さっさと着替え終わった俺は自席でじーっと女子共が着替え終わるのを待っているわけだが、俺は一つ納得いかないことがある。この学校に入学したやつの中にも俺と同じ中学のやつが何人かいる。そのうちの一人が俺の前の席の鈴川千鶴だ。
鈴川とは中学時代に同じクラスになったことがあるが、その時はひたすら人の目を気にして恐る恐る着替えていたくせに、今は俺など眼中にないといった勢いで堂々と着替えている。まったく集団心理とは恐ろしいものだ。ぼーっと前を向いていれば、自然と鈴川の尻が目に入ってくるので、俺はいつも窓側を向いているしかない。
「あ、そうそう、大岩くん、化学の宿題見せて」
鈴川は着替え中に突然振り返って俺を呼ぶ。ああ、自己紹介を忘れていたが、俺の名前は大岩裕樹という。まあ大抵下の名前は使われることはないのだが。
「宿題くらい自分でやれ」
呼ばれたからには一応鈴川の方を向くが、首から下を見えないように頭を上に向ける。それでもやはり鎖骨くらいまで見えてしまうのは仕方ない。
「だって忘れちゃったんだもん、一回だけでいいからさ」
「その前に頼むから服を着てくれ」
「えー、別にいいじゃん、体育で汗かいてるんだし」
面と向かって注意すれば多少恥を取り戻すだろうと思ったが、それはなんの意味もなさなかった。
「俺に見られて恥ずかしいとは思わないのか」
「別に?……というか、もしかして大岩くん、見たいの?」
「……もう宿題見せてやらん」
「うぇえ!?ちょ、ごめんなさいぃ!すみません許して大岩様あ!」
俺とて男であるからして、そういう願望がないわけではないが、だからといってクラスの女子の下着をじろじろ見ようなどという変態ではない。
乞い始めたので、早急に服を着るように指示し、ちゃんと服を着た後で俺の宿題を見せてやろう。しかしながら、俺は字の汚さが尋常でないことで有名なのであり、それを鈴川が解読できるとは思わないが。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます