今期一番のクソアニメを決めようぜ!!

ちびまるフォイ

どん底とは最高のスタートラインである

「さぁーー!! 今年もはじまりました!!

 クソアニメナンバーワン、通称K-1グランプリ!!

 今期(2017年春アニメ)で一番おもしろくない作品を決めましょう!!」


会場は大いに盛り上がり、アニメ関係者も腕組みしながら成り行きを見守る。


「エントリー1番! 『ID-0』!!」


客の歓声と「ああ」と思い出したような声。


『ID-0』

フル3DCGによるオリジナルアニメ。

遠隔アンドロイドを操って記憶を取り戻す作品。


「エントリー理由は、話が重いのもあいまって内容が入ってこない!

 フルCGが足をひっぱりキャラの魅力も半減している!

 よくあるSF超大作(笑)をアニメ化したという印象でエントリーです!」


「でもCMのクイズは面白いじゃないか!」


「そんなのは本編の小難しい内容の息抜きで楽しく見えるだけです!

 正直、記憶を取り戻すとか、とっぴな設定で感情移入もできないのに

 "ああ、そっすか"という印象です!!」


司会(俺)は、語り足りない内容をぐっとこらえて次のエントリーを促す。


「さぁ続いてのエントリーは……『銀の墓守り』!!」


客席からは「なに?」と疑問の声。そもそも認知度が低い。


『銀の墓守り』

中国のウェブコミックが原作。

ゲーマーの主人公が夜な夜な墓を守る敵を倒していく作品。


「なんか紹介がざっくりなんですが……」


「イエス!! というのも、このアニメ15分しかないんです!

 残り15分は「おっさんのギャグアニメ」が放送されています!!」


客席からは「知ってた?」と顔を合わせる声多数。


「さて、こちらのアニメは主人公のゲーマー設定がほぼ意味なし!!

 "俺は無課金だぜ!"とか言いながらゲームをやって、

 バトルシーンは無双しまくり、女の子とイチャイチャしつつ

 寒いギャグを入れていく……あれ、これ俺の小説じゃね?」


司会はかつて自分の書いたライトノベル(笑)を思い出した。


「と、まあ素人が自分の妄想をそのまま形にしたものを

 編集をスルーしてアニメ化したような作品で、

 作者の妄想と同調できないと完全なる苦行になることでエントリー!」


司会はマイクを振って次の紹介へと急ぐ。

というのも、これ以上言葉を重ねるとただの文句にしかならない。


「そして!! 最後のエントリーは……『正解するカド』」



『正解するカド』

東映アニメーション製のオリジナルCGアニメーション。

突如、巨大な立方体から出てきた異人により世界があわてふためく。



「こちらの作品もCGアニメからエントリーですが、

 けして「CGアニメだから」という理由ではありません!

 ベルセルクや、かつて亜人もCGでしたがクソではなかったです!」


「人間……では、どうしてクソアニメだというのか……」


「劇的な展開がないのがエントリーに大きく貢献しました!!

 話の大半は"新エネルギーどうしよっか"で揺れ動く政治がメイン!


 といっても、異人(ヤハクィザシュニナ)のさじかげんでどうとでもなるので

 試行錯誤して結論を出すというよりも指示待ちという感じです!」


「つまらなさがいまいちわからない……」


「考えて、試行錯誤して、失敗して成長して……ならいいんですが

 偉い人が決めて行動して、世界が慌てふためいて、成功も失敗もしない。

 というか成功なのかわからないのが原因です!


 なにやってんだこの人たち感が強いためクソアニメにエントリー!」


司会は紹介を終えてひと段落。


「さて、これですべてのエントリー作品がで終わりました。

 ほかにも

 『クロックワーク・プラネット』『サクラダリセット』

 『sin 七つの大罪』『Re:CREATORS』などありましたが

 今回は惜しくもウリがあるためにエントリーを逃しました」


そのとき、会場にひとりの男が入って来た。



「おっと、俺を忘れちゃこまる!」


「お前は……『ロクでなし魔術講師と禁忌教典』!!!」



『ロクでなし魔術講師と禁忌教典』

第26回ファンタジア大賞大賞受賞作のアニメ化作品。

魔法学校にやって来たやる気ゼロの講師がモテるアニメ。


「こ、これしかない……!!

 今期クソアニメナンバーワンは……『ロクでなし魔術講師と禁忌教典』に決まりました!!」


突然のダークホース登場に会場はびっくりした。


「この作品はライトノベルでよくある"本気出すと強い"主人公が

 "よくある"実は重い過去"を持って、"よくある"女の子の生徒にチヤホヤされつつ

 "よくある"魔法の戦いにまきこまれていくアニメです!!」


それがライトノベルなんじゃ…というツッコミをした観客は

司会の手によっていましがた殺された。


「この作品にはひとこと!! たったひとこと、この言葉を贈りましょう!!」




――そういうの、もういっすわ。




「政府と敵対する悪い魔法組織と戦うとか劣等生でやってましたし

 やる気ないキャラも銀魂の銀さんの劣化ですし、

 魔法もいまじゃどこのアニメも息を吸うように使っていますし……



 そう!! このアニメは空前絶後の超絶怒涛の空気アニメなのです!!」


言い切った瞬間、会場にいた関係者は青筋を立てて怒った。


「貴様!! さっきから個人の感想だと聞いて黙っていれば!!

 これを毎週楽しみにしている人もいるだろう!!

 貴様が楽しまないのは結構だが、おとしめるのはちがうだろ!!」


「うるせぇ死ね」


司会は暴君さながらの魔法を詠唱して関係者を焼き殺した。


「楽しんでいる人の顔色うかがってちゃ感想なんて書けやしない。

 それに、まだ放送中のこのタイミングで投稿した理由がお前にわかるか?」


「我々への営業妨害だろう?

 "こんなクソアニメ見るんじゃない"っていうことだろう?」


「バカが。逆だよ、期待しているんだ。

 けものフレンズが1話目で批判ばかりだったのに終わってみればどうだ?

 いまや世界全土がフレンズになっている」


「…………つまり?」



「このアニメは"現時点"では最高のクソアニメだ。

 だが、俺は原作を知らない。この先の展開なんてわからないんだ。


 この先、いっきに盛り返して俺の批判を見返せるチャンスが残ってる!

 だからこそ放送中のこのタイミングでの批判なんだ!!


 最終話で逆転して俺の感想を"見る目ねぇな"と見返してみろよ!!」



「おまえ……! そんなことを……!」


「これは炎上商法でもステマでもない……。

 ただ、俺は個人的な批判だけで終わりたくないんだ……。

 空気アニメを変えたい。1週間の楽しみを1個増やしたいだけなんだ……」


司会の言葉に関係者は心をうたれた。


「ありがとう、そんな風に思っていてくれたとは。

 きっとこの作品の魅力に気付ければ楽しんでもらえるはずだ」


「えっ」


「君の家にこれまでの話が入ったディスクを贈ろう。

 もちろん原作も贈っておくよ!」


「いやちょっと……」


「設定資料や裏設定も渡すから、すべて目を通してくれ!!

 そうすればこの作品の魅力にきっと気付けるはずだよ!!

 1週間の楽しみが増えるよ! やったねたえちゃん!!」




その後、失踪した司会の行方を知る者はいない……。


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