第42話 ゼロセンチから十五センチの距離……(14)

 ……でも、相田彼女自身も僕の台詞を聞いて慌てていたのだと思うよ?


 だって僕達二人は、昨日迄は普通にいつものじゃれ合いをしながら恋愛をしていたのに。急に僕が、『わしは相田とは!』といった台詞を吐いたものだから仕方がないか……。


 まあ、相田あいつのせいにしても仕方がない……女一人を自分の彼女モノだと述べる事も出来ない弱い僕がいけないのだから。


 まあ、あの時の僕は、自分自身がとてもしくて……真面に自分の|相田の顔をすら見る事も出来ずにいたよ。


 でもね? そんな惨めな僕を気にもせずに相田は、学ランに付着した足跡と黒板消しの跡を優しく叩きながら消してくれたよ。何度もね。


「浩太、大丈夫?」と、本当に僕の事を心配しながら優しい言葉を幾度となく掛けてくれたよ。同じクラスの間は……。


 それこそ、に「あんたら、浩太ばかりイジメんさんなゃー!」と、憤怒しながら言ってくれた事も多々ある。


 その都度僕は相田に「御免ね……御免ね……」と、惨めな声を漏らしていたのだけれど。


 う~ん、でもね?


 そんな優しい相田も、あの時に僕がに吐いた──『相田とは付き合っていない!』の言葉は許してくれなかったよ。


 だってあの事件の後に、僕と相田の席の距離はゼロセンチから十五センチに……入学したばかりの頃の距離に広がった。


 そしてこの距離は二度と、ゼロセンチに戻る事は無かったよ。


 う~ん、どうやら僕は、この時に自身の心の拠り所でもあった初恋の相手でもある。愛する相田女性を失ったようだ。


 だからクラスが変わると、惨めな僕にいつも優しい声を掛けてくれていた相田ひとがいなくなったから。僕は直ぐに切れて、が手に負えなくなる人生を歩み始めたよ。


 相田彼女との事を後悔しながらね。






 ◇◇◇◇◇



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黒板に書かれた男女の傘マークと十五センチの距離! かず斉入道 @kyukon

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