第40話だましだまし
本日の一品:ギンムツの味噌漬け
ギンムツは解凍して塩をして水気をよく切る。
漬け魚の場合はこの工程を怠ると魚から出る水ですごいことになる。具体的には味噌床が味噌スープになるくらい。
味噌はそのままでも良いが固いなと思われる場合は少量の清酒で伸ばしておく。この時に好みで生姜、ネギ、唐辛子を加えておくのも良い。
漬け込み時間は半日から数日、すぐにたべない場合は一切れづつラップして冷凍保存も可能。それでもすぐに食べる事をお勧めする。
焼くのは味噌をはしか何かで軽くこそげ落としてからの方が良い。味噌は焦げるのである。これはこれで風味があってよいのだが、魚に焦げ目がつかないなんて笑い話も。
これは飯、麦飯が良い。味噌汁と香の物があれば完璧である。
本文
だましだましって私の体ではありません。勿論私が抜ける事となっている今の現場の貧弱な人員体制の事でも(お察しください)。和名がライギョダマシ、通称がメロとかギンムツと言われる魚について騙りましょう。
かの魚は南極で取れる魚で〇〇産と表記されておりますが、海は一緒だったり。見たことあるのがチリ、アルゼンチン、オーストラリア、ニュージーランド、中国、アメリカ、フランス・・・・・・・・・・・見事にバラバラですな。おかげでどこで取れる魚なのと言う質問もちらほら、この場合は船籍〇〇と言った方が正しいのかもしれません。まぁ、何処の船で取れても味に違いはありませんので悪しからず。身が白く冷凍焼けしていなければよい物と思っておけば問題なし。
味については脂がのって柔らかく・・・・・・・・・・・特殊な生態ゆえの特性なのでございましょうか、他の魚とはまた別の味わいを持ったものであります。お勧めは煮つけに漬け魚、お客様の調理法も大体これに着きます。他にもフライなども美味しいのですが、脂が強いイメージがあるからなのか油と合わせる料理はされないようです。当のギンムツ氏からすれば『食べられちゃう、あたし食べられちゃう(食事的な意味合いで)だから広めないでぇ!らめぇ~!』と言ったところでございましょうが。
そんなギンムツですが値段が高い。販売価格でグラムあたり300円越えは当然とばかりに下手すれば500円に届くかも。下手な牛肉顔負けで安売りの本マグロ並の値段がするので御座います。ですから薄めに切って一切れあたりの価格を下げて売り込もうとすると。
「にーちゃん、そんな薄いんじゃ旨くないんだよ。もっと厚く切れよ!」
とご注文を頂くのであります。この辺の注文はギンダラや塩鮭でもよく言われるものでありまして、わざと厚く切った切り身を用意することはよくある事であります。これは結構売れる物ですから調子に乗って厚切り祭りだなんてやっておくと売れ残ったり、これは少量を常備しておくものでありますな。って、数パックだけ用意したら
「にーちゃんもっとないのかよ?」
普通に一日数パックの売れれば良いという商品なので作ってないです。作ります?
「じゃあ、30切れくれ。」
それは普通の大量注文、そんなに食べきれるので?
「ああ、店で使うんだ。うちの店はすぐそこだから来てくれよな。」
うん、太客なのはありがたいのですが前もって注文いただけると・・・・・・・・・って、ギンムツは高いから一枚(俗に言うフィーレ)単位でしか入荷していないのに。慌てて、取り寄せてもらって・・・・・・・・
「なんというか悪いことした?」
在庫がないから注文するだけだし其処は問題ないのですが、取り寄せる時間ください。
「じゃあ、あとでくるわ。」
では届いたらご連絡差し上げましょう。数日後、注文の厚切りギンムツが用意できたので連絡差し上げると。
「にーちゃん追加できるか?あと50切れ。」
うぉい!
話を聞くにうちで買った切り身を味噌漬けにして出したら売れるのだそうで漬け込み時間が足りなくなるとぼやいているお客さん(飲食店調理長)、だったら最初から大量に漬け込んでおけば・・・・・・・となるわけで、この量どんだけではけるんで?と聞けば
「一週間もたない。うちの人気商品だ。」
とか・・・・・・・・・・おみやとして焼く前のを持ち帰られる酔客もいるようで、いっそのこと漬け魚屋になったらと笑ったのは仕方がない事でありましょう。
「俺は焼き鳥主体なんだ。魚はおまけだ!」
と言っていたお客さん、母屋とられてますよ。その店が焼き鳥メインで続けられたかどうかは私の知るところではない。
だって、ギンムツの味噌漬けは美味しいのだから。
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