第36話もろだし

本日の一品:モウカザメのチーズ挟みあげ


モウカザメの切り身を二枚に切る。軽く冷凍してから切ると薄くやりやすい。難しかったら叩いて延ばしてもよい。

切り身に塩、コショウを振りチーズを挟む。叩いて延ばしたものだったら丸めるように入れても面白い。チーズと一緒に大葉だの梅肉だのジャムなんて言うのも面白かったりする。後は柚子胡椒やかんずりなんかも悪くはないがこれは後から添えるのでもよい。

鮫の切り身に衣をつけて180度の油でからりと揚げる。パン粉だの面倒であったならば水溶き小麦粉でてんぷら風でもよい。衣の種類によって色々遊べるので試してみるのもよい。個人的にはとき卵にくぐらせて油多めに敷いたフライパンで焼くのが・・・・・・・・ってこれでは別の料理だろうと突っ込みが入ってしまうのでおいといて。


揚げたてにビール。これは最強の組み合わせ、好みでレモンやソース、柚子胡椒、タルタルソース、からし等を添えて・・・・・・・・・・・

後大事なことだけでレモンをかける時は自分の分だけにしておこう。これはマナーだ。




本文


 タイトルは私の性癖とは関係ございません。相撲の決まり手でもありません。

 今回ネタにするのはモウカザメ、モロ等と称されるサメの一種である。三陸沖でよく水揚げされ鰭の部分は某大陸の人達の珍味として食されるのだが身のほうは地元の人が中心に食されている魚であります。値段も安く味も悪くはないので売れるときにはよく売れる。煮付けなどよりも唐揚げとかフライにしたほうが美味しく思えるのは我見というものでありましょうか?揚げたてを焼酎のビール割で流し込むと夏の暑さも吹き飛ぶというものでありましょう。



 さて、このモウカザメに限らず市場から入荷するときに箱に何某の魚と書かれていることが多いのだが結構いい加減な表記であることが多い。サバなんかも平サバ(マサバ)丸サバ(ゴマサバ)とか普通わからねぇだろと突っ込み入れたくなる書き方だったり、マグロなんかもだるま?めじ?きめじ?書き方が適当なのである。内内で分かっていればいいやという書き方をしているので箱ごと並べる時等はお客様から突っ込みという名の質問を受けることが多々あります。その辺は流通にかかわる経験を持たれたお客様等はご理解いただけるのでございますが馴染みにないお客様等は・・・・・・・・・・・


「いい加減ねぇ」

 等と感想を述べられることが多々ございます。まぁ、平と書かれた箱の中で平サバ(マサバ)だと思っていたらヒラスズキだったとか・・・・・・・・それに突っ込みを入れる平社員の若手君。

「平じゃないのかよぉぉぉぉ!」

 気持ちはわかるが表記自体は間違いではない。ヒラスズキも美味ではないか・・・・・・・・・・・・・

 ちなみにそのヒラスズキは(お客様が)美味しく頂きました。誤配送で(利益的に)美味しく頂きました。美味しく頂いたのは大事なことなので(略)


 話をモウカザメに戻すとモウカザメの場合、モロ、毛鹿、毛鹿鮫、ネズミ等と入れられることが多いのだがある日届いたのを見たら【毛鮫】と書かれていた。ケフ○?

 脳内で耳障りな笑い声がこだましたのは流しておいてください。因みに毛鮫でケフ○と読んでしまったのは私と同年代かそれより下の若い連中である。脳内再生された笑い声が耳について離れなくてしばらくサメの切り身を見るたびに自動再生してしまったのであります。


 げひゃひゃひゃひゃひゃー



 話を戻しましょう。ここ最近モロの売れ行きがよいのである。その影響をもろに受けるのが切り身担当である私なのですが何もしないのは芸がない、少し遊んでみるとしますか。

 ネタに走った私がモロの角切りを作り始めるのであります。

「ばろさん(仮名)どうしてこんなに角切りにするの?」

「そりゃ、モロの切り身作るのに飽きたからじゃなくて唐揚げ用という需要を見込んでやっているんですよ。」

「気温が上がると唐揚げとかの需要も上がってくるからね、いいんじゃない?」


 さらにアジ、イワシ、小カマス、サバ、生銀鮭、イカなんかも下処理しておく。青果からカボチャとイモと大葉にレンコンを・・・・・・・・・・・少々拝借してディスプレー。

 冷蔵ケースにそれらを並べて・・・・・・・・・・・・


 ふふふっ!下処理した魚をばら売り用に山積みにしておいとけば勝手に客が持って行ってくれるのでございます。パック詰めの手間もいらないしお客さまも一個単位で必要なだけ購入できる。これぞウィンーウィンの関係でありましょう。良い品物にお手軽な調理法、別に揚げものでなくてもムニエルとか塩焼きなんかにも美味、カマスなんかは塩してから一夜干しなんて言うのも乙なものでございます。そこまで理解できているかはともかくといたしまして便利な便利な下処理積みコーナー。後はレジの御姉様(年齢層色々、ただし婆というと私の身が危ない)方がこの魚はどれだっけと頭を抱える羽目になるだけなので問題なしと値段もそろえてあるし打ち間違えても実害は少ないはず。


 この下処理積みコーナーはよく群がっております。さすがにカマスはとっつきづらいのでしょうけどイワシ等は開くそばから持ってかれて・・・・・・・・・・一ケース(約40尾入り)が一時間も持たないのはどうしたものでございましょう。おかげでほかの仕事が・・・・・・・チラシの商品とか予約の商品とか・・・・・・・・・・

 面倒くさいので一気に3箱開いておいて・・・・・・・丸?すっかり忘れていた。サンマも開いておけば・・・・・・・・


「これば便利ねぇ。」

「これに大葉と倍肉を合わせて揚げる予定ですわ。」

「後で皮をむけば刺身に・・・・・・・・」

 これらはお客様の声、最後の刺身にというのは開きたてだから良いけど時間がたったのを使うのはやめて欲しいものである。開いたそばから持ってかれるので問題ないけど。


 客数自体も普段と変わらないから後はパイの取り合いである。精肉に負けてたまるかと息巻いている二番手氏もこれにはニンマリ。売場のメンテナンスが面倒くさいのであるが売れているから手間かける意味があるし気合が入るものでございます。


 その売場に便乗して梅チューブだのチーズだのを置くのはやめてほしいものである。青果の担当者さん、微妙に野菜追加してない?

「勿論、関連で売り込むというのは大事だから。」

「いやぁ、チーズ(店名につき削除)店の馬鹿が発注一桁間違えて売るのに大変なんだよ。ばろちゃん(仮名)も協力してよ。少しオミヤに融通するからさぁ。」

 青果担当はぶれないし乳製品担当は少し自嘲しろ!

「いやぁ、モロざめにチーズ挟んでチーズフライなんか美味しそうじゃん。後はトマトソースかバジルソースでも良いけど、梅肉なんかも相性良さ気だよね。」

 どれだけ納品されたのやら、後売場の権限は私じゃなくて売場長に・・・・・・・・・私はしがない派遣ですので。

「どう考えても、売場長よりも現場担当者に話しつけたほうが早いでしょう。それにこれデザインしているのはばろ(仮名)ちゃんじゃない。後ね、チーズが10箱・・・・・・・・・置ききれないんのよ、売り込み方が自前の売り場だけでは追いつかないのよ!」


 仕方ないので付き合うことになりました。いつの間にか見本としてモロざめのチーズフライが出来まして飾ってあります。そのおかげでしょうかチーズは順調に捌けていってます。会社としてのデザインを無視しているのだけどいいのだろうかと心配になりますがやり始めた手前今更なのであります。

 その日は結構売れました。たまたま指導に来られたSV(ストアバイザー:店舗指導担当)が


「鮮魚売場長君、なかなか面白いことやっているねぇ。関連も入れて良い売り場じゃないか。こっちをこうしてボイルホタテなんかも入れたり揚げ物セットみたいなものを作ったりはしないのか?」

「はい、はい・・・・・・・・・・・揚げ物セットは番号がないでしょう。添加物表記とかいやですよ。(コードを探して一文字づつ打ち込むので面倒くさいのです。)基本はそこのばろ(仮名)さんが青物の調理済みをバラ販売でまとめただけなんですけど。」

「うんうん、ばろ(仮名)クン今日売り込む指示を無視しているのは今更だから言わないけど店舗ごとのメニュー提案とか悪くないぞ。」


 因みに売り込みの指示は無視していません。力の入れ具合がこっちに傾いているのは否定いたしませんが(笑)実際の売上的にも指示された物と同等くらいでありましょうか柱は何本あってもいいものでございます。小さな店だと一点に突き抜けるのも一つの手でございましょうが、ある程度集客数が見込まれるお店でありましたらある程度のニーズにお応えできませんと・・・・・・・・・

 実際の話私のやりたい放題の暴走なんですけどね。


「で、どうして揚げ物用の売り場にしたんかね?」

 SVの質問に私は答えたのでございます。

「青物とか小物が良いの入ったのと金曜日ですから・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ダジャレで売り場作るなぁぁぁぁぁ!」


 SVの突っ込みにお客様の失笑が其処彼処から漏れだしてくるのでございました。

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