第23話にしんがはっぴき

本日の一品:鰊の刺身


鰊は鱗を引き三枚におろし腹骨をかく。

この状態でならばムニエルでも美味しいのだが・・・・・・

血合い骨を骨抜きなどに抜き去り、皮目に切れ込みを入れる。

後はそぎ切りなりぶつ切りなり・・・・・・・・・・ぶつ切りならば皮目の切込みを格子状にしておくと宜しい。

後は生姜醤油なり大蒜醤油なり。


青魚なので作りたてを食べたい。

これにはウィスキー、潮の香りのするモルトで食べたいものだ。アイラのモルトに合いそうだが手元で楽しむ機会がなかった。無念。

異論は認める。



本文


 はい、タイトルからして駄洒落です。今手元にあるのは一尾だったりする。


 鰊、日ごろ見かける機会がない魚と言えばそうかもしれないが正月等には数の子や昆布巻きにしたり、京都旅行などした時には鰊蕎麦等でお目にかかるのだろう。ミカケニシンを焼いて味噌つけて酒のつまみにしたり、糠漬けの鰊で飯の友にしたりとか・・・・・・・・・・若い読者さんには縁がなさそうな。

 それだけ私が年を取っているとか・・・・・・・左前なだけなのですけど。ふらりと寄った飲み屋で

「にーちゃん大丈夫そうだからこれ食べてみる?」

 と、鰊の糠漬け(二年物)を出されたり、ミカケニシンで酒を飲んでいると渋いねとか言われたり・・・・・・

 春告げ魚等と呼ばれるように春先が美味な時期でその時期以外は見かけた覚えがないのである。ならば数の子はいつ取れたのだろうとかいろいろ疑問があるけどそれはそれで置いといて・・・・・・・


 旨いのに年寄り臭いイメージを持たれるのか購買層は年寄りが多そうだった。後は英吉利人とか阿蘭陀人とかが喜んで買っていた記憶があるが、南の方の民族は良く判っていないようだった。露西亜人は胡瓜の酢漬けすら購入しないのだが・・・・・・・・・・


 酢漬けにして売りたい衝動に駆られたりするが、まずは刺身である。これならば余計な原材料がない分作るだけで味を伝える事が出来るのである。三枚おろしにして皮引いて、刺抜きで小骨を抜いて・・・・・・・・・

 うむ、完成!


 ・・・・・・・・・・・えっと、出来た側から味見する売場長(わざと特定できないように売場長としています。)どうしてふたを開けて実食するのですか?

 はい、鰊の刺身食べたことがない。それ以前にミカケニシンと数の子以外食べた事がないと・・・・・・・

 そうでしょうね。加工品しか見かけないのが関東の鮮魚売り場でしょうし、丸の鰊でこれだけ鮮度が良い物が入るなんてここ10年くらいなものですしね。

 だけど、私がせっかく作り上げた商品をお客様の手元に提供するまでもなく食べつくすのは間違いだと思うのですよ。そして見慣れないものだからって上司に意見を求めるのは当然だと思うのですけど作り上げたもの全てを差し出すのは・・・・・・・・・酷いのです。いくら店がひまで私に再度作るだけの余力があるにしても私の気力と言うものにも限度があることを知ってほしいのです。その日は再度作りました。

 これ食べられた分はちゃんと経費で落としたのでしょうか?


「売れない鰊に経費扱いするわけないだろ。売れ残り扱いにして仕入れ値を下げるんだ。」

 たくましい事で・・・・・・


 そして鰊の刺身は売れることはなく、値引きにされましたとさ。



 後日、鰊の刺身はないのと言うお客様の問い合わせに苦笑するしかありませんでした。その対応は良い鰊が入荷したときにご連絡差し上げることで納得していただきましたが、結局連絡することはありませんでした。


 だって、良い鰊ってなかなか手に入らないものだからねぇ・・・・・

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