第21話あごにも意匠

本日の一品:トビウオのナメロウ茶漬け。


トビウオを刺身用におろし、細かく刻む。骨抜きなどすればよいのだろうが面倒なので骨の所は外すのも一法。

ネギ、味噌、生姜と共に叩き交ぜる。季節や好みで胡麻や茗荷、大葉を加えていくのも美味。


この状態で食べればナメロウ(沖膾)、丸めて焼いても美味。


これを飯にたっぷり載せて、アゴ出汁で入れた茶をかけると・・・・・・・・・


酒の締めには最高なのだ!




本文


 タイトルには意味はありません。自然界の造形美には美が宿っていますな。


 さて、今日はトビウオについて語ることにする。トビウオは見た目は面白いのだが意外と売りづらい魚である。お客さんにしても海沿いで食べつけていないと美味しいのかどうかわからないと言う者も・・・・・

 そば、うどんを作る者にとってはアゴ出汁は大事な物でありましょう。鰹節と昆布に加えてアゴ出汁を入れると旨みに深みが出て美味しい物であります。最近ではラーメンのスープに加える店も魚介系の出汁の名脇役となっているのは知られているのかいないのか。魚卵にしても回転寿司等で飛子の名称で馴染みがあるでしょう。黒く着色してキャビアの代用品にしたりする。あとは干物、くさやとか開きアゴなんて言うのも酒のつまみに最高ですしそれだけで丼何杯かは呑めてしまう。


 で、どうして売れないのか?考えてみる。青魚にして脂っ気が足りない魚であるから、それだけで敬遠されてしまう。魚を選ぶときに脂がのっているかどうかで判断するのが多く

「このトビウオは脂のっているの?」

 と質問することが多々あり、その質問に対して正直に

「トビウオだから脂はのっていない。」

 としか答えられない。ここでうそを言っても後々問題であるし私は客に対して嘘は言っても味に対して嘘は言えない・・・・・・・・・・・話が逸れたがその答えを聞くと他の魚を選ぶのである。後は意外とサイズが大きいから焼き網やグリルに収まりきらないのが原因か。実際に焼く様に処理するときに半分に切ってくれとか言ってくる客もちらほら・・・・・・・


 話のタネやら季節感の演出のために仕入れることがあるトビウオであるが、大きすぎてトレイに収まらないのが多く、パック売りにすると見苦しくなるのも一因なのであろうか?そんなときは頭を落としてから開いておくのである。そうするとトビウオの特徴である翼のような胸鰭がないと寂しそうにするものも出てくるし難しい物だ。気持ちは判るがどちらを立てればよいのだろう(笑)

 その点ばら売りと言うか丸ごとを氷の上に飾っているのは中~大型魚を魅せるには楽なのだが、これはこれで管理の面で人手が必要なので最近の店ではあまりおこなっていない。私なんかも時折のイベントの時に一日だけとか区切って行う程度である。

 開いても売れない・・・・・・・・ならば、刺身にならばどうだろうか?三枚におろして、骨抜きをして・・・・・・・

 脂のない魚には興味がない?身の旨さだけを知らないとは何とも不幸な事、ならばナメロウに・・・・・・・添加物表記?調理師?・・・・・・・糞っ!ここにも厚生労働省と保健所の無粋な魔の手が!お気に入りだった生肉とレバ刺しを食わせてくれる店もあおりで閉店してしまったし・・・・・・・奴らは敵だ!

 おっと、失礼。仕方ないのでナメロウは後でスタッフ(従業員)が美味しくいただきました。ところで、ナメロウ制作者である私の所には来ないのですけど・・・・・・・・・

 何々?1キロじゃ足りない?どれだけ食べるのかお前らは・・・・・・・・って、精肉やら青果からご馳走様の声が・・・・・・・・デイリーにグロッサリーも?配って歩いたのですね。そりゃ残らないわけだ。


 えっと、営業部長私に何か?お代わりは?これから関東地区の幹部がそろうから茶請け代わりに作れ?はいはい、まだトビウオあったかな?これ営業経費若しくは本部付け扱いで振り替えてくださいね。そのまま出したらこっちの不明ロスに・・・・・・・


 その後、酒が欲しかったという某幹部。気持ちは判りますがそこまでは私は面倒見きれません。ちなみに飯が欲しかったとか茶漬けにしたかったという某幹部もいたのだが彼等は給湯室という存在と総菜売り場という強い味方がいたらしい。

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