第6話おお、かみよ
今日の一品:オオカミウオの煮付け。
オオカミウオの切り身はあらかじめ塩しておく。塩したことで切り身から水が出てくる間、酒を煮切る。煮切った酒に生姜葱を放り込み、浮いた水気をふき取った切り身をぶっこむ。
後は、適当に煮えたら塩、醤油など好みで味付けする。個人的には味噌がすき。塩も悪くない。
ここで間違えてはいけないのは出汁入り味噌とかプライベートブランドの腐れ調味料を使わないことである。出汁入りだと味が濁るし、プライベートブランドの調味料は安かろう不味かろう(作者の偏見です)なのでオオカミウオの味が負ける。
甘辛く煮付けたオオカミウオには辛口の酒が良く似合う。後は焼酎のお湯割り。
飯という意見も大事にするがそのときは麦飯で・・・・・・・・・
本文
マタイさんはマタオさんでは有りません。(別に破門されても困りません、私………どこの信徒だっけ?)
オオカミウオという代物を関東で手に入るとは思わないだろう。私も思った事がない、和名もなく一般的でもない魚が当時勤めていた店の店長が面白そうだからと仕入れたのである。
それ自体は厳しい面構えをした魚であるのだが、おろす段となって誰も手を触れたがらない・・・・・・
ぬめっとした表皮に厳しい面構え・・・・・・・・恨めしげに睨んでいるのかと思える風体にしり込みする連中・・・・・・・・・・・ はい、派遣の私が捌けば宜しいのですね。私は愛用の八寸出刃を構えて挑むのである。
ぬとっ!
表皮のゼラチン質を切り裂くのはとても苦労する、そのゼラチン質の表皮を切り裂くと白い身が出てくる。この身は骨にそって刃を滑らせれば綺麗に分かれるのである。丸のままで三枚にするのは面倒だと思われる御仁がいればある程度にぶつ切りにしてから切り分けるほうが楽である。この方法は大きな魚を小さなまな板で処理するときに便利であろう。後は太刀魚とか・・・・・・・
話がそれたが何とか三枚下ろしにして切り身にする。ここまでは普通である、私でも何とかできるのだから大抵の者ならば何とかなるだろう。
そしてその切り身の一部を気を利かせた年嵩の職人が塩焼きにしていくのである。多分本人の好奇心が旺盛なのだろうがここは勉強熱心としておこう。魚屋は知らない味の魚を売るべきではない、食べ方も知らないで面白いからと仕入れるのはもってのほかである。もってのほかと言っても食用菊ではないぞ。
脱線した、私も好奇心の類は持ち合わせているので焼きあがるのを楽しみにしているのである。食道楽と言うなよ。種々の魚を取り扱う我等は自分の舌でその評価をしなくてはならない、好奇心を持つことはほめられこそすれ厭われる筋合いはないのである。食べて知ってこそお客様に勧められるのであるから(自己弁護)
さて、他の仕事をしている間にオオカミウオの塩焼きが出来上がる。
皮のプルプルが焦げ目と合わさってなんとも・・・・・・・・・って、言うか脂が滲み出て池となっているではないか!
とりあえず食してみるとしよう・・・・・・・・・・・・
身は癖がなくて脂っ気を含み悪くない味である。皮の方は・・・・・・・・・ゼラチンと言うか脂肪でした。このゼラチンを含んだ皮を引き剥がしてビヨンビヨンと・・・・・・・・・脂肪遊戯をかましていた若いのがいたが食べ物で遊んではいけませんと躾けられたのは正しい事である。
皮を齧ってみると・・・・・・・・・ブニブニで脂たっぷり・・・・・・・・・塩焼きはこの皮が生かせないなということだけが理解したのである。因みに皮を引いた状態で切り身にすると焼き網だと崩れるのでホイル焼とかムニエルにするとよいと言う事が判った。某メーカーの業務用ムニエル粉との相性はよかったと言っておこう。皮付きの場合は煮付けだな、煮ながら少し脂を掬い取る事をしなくてはならないだろうがこれは悪くない味である。
北欧では団子にするという話があるがそれは試したことがないのでなんともいえない。その後手に入ることはなかったし、その店を離れた今となっては手に入れる術がない。
これはどうでもよい事である。
因みに客のウケ?知名度のなさと外面の悪さがあだとなりましたが何か?
嬉々として持ち帰ったのは味見した連中である。わたし?派遣がそんな大それた事出来るわけないでしょうが。欲しかったけど。
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