【アン・コール】

M/A/D


 販売総数、DL総数0回。公的な音源がけっして出回らない、ライブ活動だけのジャズトリオ。強盗童話本編での初出は意外と早く、実はさりげなーく『シンデレラ=エンゲージ』の1から出ているのでした。お気づきでしたでしょうか。


 メンバー構成はサックス、ピアノ、ボーカル。DJマシィが『ストリートジャズの神様』と言っていたので、ストリートライブではピアノ担当がドラムになったり、トリオジャズの時はボーカルがバイオリンを弾いたり、サックスがその時どきでアルト、テナー、ソプラノを使い分けるという色々と芸達者な三人組。


 灰音が『世界中にファンがいる』と言ったとおりフットワークも軽く、そしてやっぱりマシィが『録音したらダディに見つかるなよ?』と言い、この項の最初にもあるように彼らは音源を作らない。




 ――さて、このM/A/D。実は『強盗童話』よりも古い、冬春とはるがずいぶんと昔に書いた短編から出張しています。その時からタイトルはこのままで、読みは『マッド』でも『エム・エイ・ディー』でもお好きな方を。作者個人は後者で読んでおります。その短編はここに載せるのもどうかと思うのでまあ、あまりお気になりませんよう。ここでは強盗童話での三人を紹介いたします。



 <ザ・サックス>レン


 リーダー。幼少の頃からサックス吹きの祖父に育てられ、二人で慎ましい生活をしていたが祖父が逝去してからは独りで形見となったアルトサックスを路上で吹き、日銭を稼ぐという生き方をしていた。三人の中で一番若く、またに好かれる、というヘンな特性を持っている。


 OZの中ではレオ、スズと仲が良い。たとえばそう、きっかけは曲が終わった後にレオが「これからアンタらの音を聴く時はストレートで飲む事にするよ。ロックはダメだわ」と、氷の溶けきったグラスを持ち上げて笑ったことであるとか。



 <悪魔のピアノ>ディドル


 ピアノ担当。自棄めいていたところに少年期のレンと出逢ったことから続く腐れ縁。でもメンバーとしては最後の加入。三人の中で一番。(あるいは自身を省みてか)『レンくん、キミは妙なモノに好かれるからネ。気を付けたまえヨ』と彼の特性を見抜いた張本人でもある。そしてこの口調でもある。


 ピアノの運指がまさに悪魔めいていて、それはまるで――おっと、失礼。



 OZの中ではカカシを一番気にかけている。猫背なイメージがあるくせに、実際は背筋がピンと伸びているところとか。そしてライブ後に、誰に聞かせるでもなく一緒にピアノを弾いたりだとかしたりする。


「M/A/Dのディドルとピアノを弾くとか、実力的に恥ずかしいんだけど……誰に聴いてもらおうってわけでもないのにさ」


「じゃあなおさらだネ、カカシくん。誰の為でもない、ともすれば自身の為でもないモノをひとつくらいは持っていた方が良いヨ」



 <天使の歌声>アンジェラ


 ボーカル担当。M/A/Dの紅一点。レンの恋人。彼と彼女が出会ったことから、独りのサックス吹きはストリートジャズの神様にまで押し上がることになる。

 感情表現が鈍く、それは演奏の時のみ如実に表れるというパッと見凄く気難しい感じのお姉さん。ボーカルの際には専用のスタンドマイクを立てるがスイッチを入れず、生声だけで唄いきるとかいうよくわからないルーチンを持っている。


 OZの中ではドロシーと一番仲良し。閉店後のロッソ・エ・ネーロで一緒に歌ったりする。


「――My Fair Lady♪ ……はぁ。一度で良いからあたしだって言われてみたいのに」


「falling down?」


「そう!」


「そうして、何度でも橋を架けるのね、貴女は。……少し似ているわ?」





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 さて、ひとまずマテリアルの人物紹介はここでおしまいとさせていただきます。来週からはまた別の何かをお見せできれば、と思うのですが。ですが。


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強盗童話マテリアル/Garden of MillionDollars 冬春夏秋(とはるなつき) @natsukitoharu

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