第9話 館林明【サイコキネシス】4
「な、なんだ⁉︎」
「ひっ!わ、訳わかんねぇよぉぉ…お、俺は伝えたからな!」
そう言い残し、その生徒は廊下を走り去っていく。
「お、おい!っくしょう…校庭行けって…そこに何があんだよ明………い、いや待てよ?校庭?」
そう言うとライトは、校庭とは真逆の上へと続く階段を目指し、再び廊下を走り始めた。
*
ライトが勢いよく屋上へと出る扉を開ける。空は曇っており、少しだけ雨も降り始めていた。
「明⁉︎いるか⁉︎」
屋上全体に聞こえる声でライトが叫ぶ、するとライトの上から声が聞こえてくる。
「あれ?なんでいるの…校庭に行ってって伝えるように指示したのに…」
「あ、明!」
明は
「お、おい…学校が大変なことになってるんだ!早く逃げないと…」
「知ってるよ?だって僕がしているんだから」
「………は?お、お前何言って…」
「そんなことよりさ、なんで屋上来たの?指示が伝わってなかったとしても、屋上に来る理由はないよね?」
ライトの言葉を無視し、明が問いかける。するとライトは溜息をつき
「校庭に行くようにとは言われたよ……けどな、お前は校庭に行けなんて漠然としたことを言う奴じゃない、もし俺に来て欲しいところがあるならもっと分かりやすいところを指定するはずだ。それで気づいたんだ、もしかしたらお前は校庭という名の下に意識を向けさせることで上に意識を向けないようにしてるんじゃないかって」
「……はははライトには敵わないな…けど、そんなライトだからこそ僕は超えたいと思い、いつまでも守られてちゃいけないと思ったんだ…」
「何言ってんだよ…明…守るなんて、そんなの友達なんだから当たり前じゃないか…!」
「……君にとってはきっと当たり前で…だからこそ、そんなに強いんだろうね…けど僕にはそんな勇気も…力もない…けど、出来るようになったんだよ!人を…僕をいじめてきた奴ら、無視し続けた奴ら…相談しても何もしてくれなかった奴らを殺すことも!そう!校舎を破壊することさえも!ははっ!ははははは」
そう言いながら明は高らかに笑い出す。
「お、お前…どうしちまったんだよ?」
ライトは表情を曇らせながらそう問いかけた。
*
「っててて……」
屋上から床ごと落下したライトは自分の体をゆっくりと起こす。
「っ!明!」
そう言いライトは上を向くが、その目に飛び込んできた光景は、崩壊して瓦礫の山と化した校舎の無残な姿であった。
「う、嘘だろ?み、皆んな…潰されちまった…のか…?あ、明…明ぁぁ‼︎」
ライトが叫ぶが返事はない。ライトは立ち上がり、崩れた校舎の方へと向かっていく。
「だ、誰か…誰かいないのか?……うっ!」
そう言いながら、瓦礫の山を見渡すとどこからか赤い液体が流れ出てくる。
「は……?なんだよ…これ…?なんで誰もいないんだよ!返事しろよ!誰かいないのか⁉︎」
明が目に涙を浮かべながら叫ぶと、どこからか声が聞こえてくる。
「…ぅ…ぁぁ…た…す……ぇ……」
「…‼︎だ、誰か!誰かいるのか⁉︎」
そう言いながらライトは声の方へと近づいていく。しかし、声の主を見てライトは驚愕の表情をする。
制服を着ているところからして同じく生徒であろうその人物は、腹には大きな石が突き刺さっており、左手は瓦礫の下敷きになって潰れている。
「ぃ、ぃたぃ…きゅ…きゅぅきゅぅ…しぃ……ぁ…」
「きゅ、救急車!そうだ!ま、待ってろ!今呼んでやるからな!」
そう言うと、ライトは制服のズボンからケータイを取り出し、電話をかけ始める。そして繋がるとすぐさま
「っ!は、早く来てくれ!は、早く!」
と悲鳴にも似た声で電話の相手に叫びかける。
『落ち着いて下さい、消防ですか?救急ですか?』
「救急だ!じゅっ、重傷者がいるんだ!早く来てくれ!」
『分かりましーー』
その時点でプツンッと電話が切れる。
「お、おい!おいおい嘘だろ⁉︎時間がねぇんだよ!」
ライトがケータイの画面を見ると、そこには真二つに割れるようにヒビがはいっている。
「な、なんだよ…こんなのさっきは無かっ……ま、まさか!」
ライトはそう言うと辺りを見渡す。すると建物の陰からチラリと茶髪が見えたような気がした。
「っ…明…お、お前なのか?お前なのかよぉぉ…」
ライトはそう言い、嗚咽を漏らしながらその場に崩れる。
「このままじゃ、本当に死んじま………っ‼︎」
ライトはそう言いかけ、腹に石の刺さった生徒を見ると、その生徒からはすでに目の光が失われていた。
「っっああああああああああ‼︎‼︎‼︎」
先ほどまで弱かった雨は強さを増していき、泣き叫ぶライトの声に重なるようにどこからかサイレンの音がした。
*
ーーその事件は結局、校舎の老朽化ということで事故として片付けられた。
死者は多数…生存者はライトと昼休みを使い校庭で遊んでいた計18人だけであった。そしてその日登校しなかった生徒を含める残った生徒達は、メンタルケアを受けた
*
アリスは自分で淹れたコーヒーを飲んでいた。すると突然、アリスの目の前に一枚の写真が現れる。
「ふふふ…今回の代価は写真ですの?代価を選べないのは不便ですが…まあこれはこれで良いですわね」
そう言うと写真を覗き込み、何が写っているのかを確認する。
「あらあら…友情?いや…これはもはや愛情ですわね…ふふふふ」
その写真には男にしては長い黒髪をした少年、篠崎ライトが写っていた。
「ふふふ…この方はもしかしたら少し入っている方なのかもしれませんわね…
そう言い、アリスはコーヒーに角砂糖を一つ落としたーー。
傀儡師はマリオネットを観て笑う あんだんご @skuryu
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