第8話 館林明【サイコキネシス】3
「平林君には復讐した…次は
3組の前に来た明はそう呟くと、不敵に笑い、3-3と書かれている教室のドアを開ける。
「東野君、いるかな?」
明が3組の生徒にそう問いかけると、その言葉にクラス中が静まり返る。明はそんなことおかまい無しにクラスを見渡すと、机に脚を乗せふんぞり返っている東野の姿を発見する。
「あ?んだよ、アキラァ…ついに文句言いに来たのか?あ?」
ふんぞり返ったままで東野がそう言い、明に鋭い目を向ける。
明は一歩、教室の中に踏み込む。
「文句なんて、とんでもないよ…僕は君にお礼がしたくて来たんだ」
「……あ?なんだアキラァ、てめぇマゾだったのかよ!ふははっ!こりゃうけるな!」
そう言うと東野はたまらないという感じに手を叩く。
「うん、そのまま笑っててよ…その方が絶望の顔とのギャップが分かりやすいから」
「あ?何言って…」
瞬間、東野の体が窓側に吹き飛んでいく。そのまま窓に突っ込んだ東野の顔からはさっきの笑顔のカケラもない。
「は?お…うぁぁぁぁああ‼︎‼︎」
窓の外へと放り出された東野は、重力のかかる方向へと逆らうことなく悲鳴をあげながら落ちていく。
グチャリ…………
何かが潰れた音が教室からでも聞こえる。
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁあああ!!!!!!」
窓の外を見た女子が悲鳴をあげる。するとクラスにいる生徒達は次々と窓の方へ向かっていく。
「う、うげぇ…気持ちわりぃ…」
「お、おい!救急車!呼んだ方がいんじゃねぇか⁈」
「いや、ここ3階だぞ…頭から落ちてるし…もう死んでるだろありゃ…」
窓から下を見ている生徒達から様々な声が聞こえてくる。それを聞き、明はニヤけながら
「良かったね、凄い目立ってるじゃないか…僕もこんな風に毎日目立ってたんだよ?はは…」
そう呟き、教室から出ていった。
「次は……そうだな、僕が助けを求めても全く助けてくれなかった…教師かな?」
明はそう言うと、一つ上の階の職員室へと向かっていく。
階段を登り、職員室が見えたところで、明は自分のクラスの担任が職員室から出てこちらに向かってくるのに気がつく。
「先生、ちょうど良かった…先生に用事があったんですよ」
「……はぁ、悪いな、今忙しいんだ後にしてくれ」
先生は面倒くさそうな顔をし、明から離れようとする。しかし明は先生の腕を掴み、先へは行かせようとしない。
「おい!離せ!なんなんだ!忙しいと言っているだろう‼︎」
「……へぇ、そんなに忙しいんですか…それなら今、忙しくなくしてあげますよ!」
明がそう言った次の瞬間、明が掴んでいた先生の腕がペシャリと潰れる。
「うぎっ⁈ぐがぁぁぁぁぁ…ああ…うぅた、館林ぃぃ…お前いったい何をしたぁ⁈」
先生が苦悶の表情で明に問いかける。すると明は、驚いたというような顔をして
「先生、以外と痛がりませんね…いやぁ凄いですよ…痛みに鈍いから僕の痛みにも気付かなかったんですね…」
と言い、先生に向かって右手を広げてかざす。広げた右手を徐々に閉じていくと、それに連れて先生の体が萎んでいき、顔がみるみる赤くなっていく。
「ぐぅ…ぐがが…ぐるじぃ…ばべろ……だでばやじぃ…」
先生がそう言った次の瞬間、ゴバキッと音が鳴り先生が白目を剥く。
「あ…ああああ……ああぁぁぁぁ」
それを見ていた生徒が恐怖の声をあげ、腰を抜かして廊下に尻餅をつく。
「あーぁ、押し潰そうと思ったのに…首の骨が折れるとか期待はずれですよ…」
明はそう言うと、能力で支えていた先生を離す。すると先生の体は崩れるように倒れていき、口から液体を垂らしながら静止した。
「ひっひぃぃぃぃ‼︎」
「……ねぇ、君…」
明は腰を抜かしたまま動けなくなっている生徒に声をかける。
「3-1に篠崎ライトって人がいると思うんだけど…その人に伝えてくれない?校庭に来てって…」
「え…?し、篠崎……?え、えっと…あの…1組の停学くらったっていう…」
「早くしてよ、ねえ」
「ひっ!」
恐怖の声をあげ、その生徒は廊下を這うようにして明のいる逆方向へと逃げていく。
「大丈夫かな?ちゃんと伝えてくれたら良いんだけど…」
明はそう言いながら、眼鏡を上に軽く押す動作をする。するとそこへ誰かが駆けつけてくる。
「お、おい、お前!これは一体どういう………な!野田先生⁈」
その人物はそう言うと、すでに息絶えた明の担任を一瞥し、一歩後ろへと下がる。その様子を見た明はニヤリと笑い
「あぁ…もう校舎ごと崩そうと思ってたんですが…もう少し遊べますね?」
そう言った。
*
ライトは言われたとうりに教室にいた。何故だか昼食を食べる気にはなれず、窓の外を見ていたその時だった、同じ階の別の教室の窓から何かが飛び出し落下する。
「はっ⁉︎なんだ今の、人か⁉︎」
それは落下し、グチャリと音を立てて地面に衝突する。その音に気付き、クラスの生徒達が窓側に近づいていく。
「うっ…」
落ちた人物の残酷な姿を見て、アキラは口を押さえて吐き気を必死に堪えようとする。そして恐る恐る落ちた人物の顔を見ると、その顔に驚愕する。
「……!な、東…野…な、なんで…」
そう言うと、ハッと何かに気づく顔をし、廊下側へと駆けていく。
「明‼︎あいつ、何処にいるんだ⁉︎」
明が朝言った言葉がライトの中で引っかかっていた。もしかしたら、もしかするとあいつが何か関わっているんじゃないのか、そんな不安がライトの心に渦巻く。
「あいつ!朝からなんか変だった、何かやるとか…先生に呼ばれて1人で行くとか……よく分かんないけど…あいつらしくない!」
そう言いながら、ライトは廊下を走り職員室へと向かっていく。
「し、篠崎!」
走っているライトに顔を真っ青にして声をかけてくる人物がいた。
「な、なんだ?悪いけど…今急いでて…」
「め、眼鏡の!茶髪の奴が…お、お前に校庭に来いって!」
「……‼︎明か⁉︎あいつ!今何処に⁉︎」
「い、いや、わかんねぇよ!けどあいつ…なんかやばいって!先生と話し出したら先生が急にう、動かなくなって…そ、そんで…え、あ…必死で逃げて…だ、だからあいつが今何処にいるかは…」
「っ!なんだよそれ…意味わかんねぇ…」
ライトがそう言った時であった、廊下や壁にいきなり亀裂が入る。
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